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山積みの課題をどう乗り切るか、ちいちゃんとお昼休み、食堂でご飯を食べながら考える。
「どーしようね。」
「もー、やだー。出来ないよー!こんなに!」
2人で会話をしているところに、さくらちゃんと美香ちゃんもお昼ご飯を食べにやってきた。
「週末みんなでやろうよ!」
そう提案したのはさくらちゃんだった。
ちいちゃんは週末バイトも無く、
「うん!うん!そうしようー!!みんなでやれば早く終わるよ!」と、かなり乗り気だ。
さくらちゃんはバイトをしていない。
さくらちゃんは、
「2年したら、嫌でも働かなきゃならないのに、みんな、なんでそんなに働きたがるの?。私は自由な2年間を楽しむ!!」
という持論がある。
美香ちゃんは、続けているカフェのバイトが楽しいらしい。
気になっていた年上の大学生の彼とも付き合うことになり、仕事中も彼と一緒にいられる今が最高に幸せみたい。
「私は土日バイトだから、パスー!」
美香ちゃんは3人で頑張って!と笑って言っている。
美香ちゃんは、課題は大学生の彼に教えてもらうと言っていて、週末は結局3人で、ちいちゃんの家で勉学に励むことになったんだ。
そして、週末を迎える。
「えー、これなに?わかんない!!」
と、ちいちゃんはハナから諦めモード。
「ちいちゃん、これ考えて!私ここやるから!!」
やる気のないちいちゃんを、なんとか、ひっぱっていこうと頑張るさくらちゃん。
そして、黙々と辞書を開いて調べる私。
「ちょっと休憩しよー!!」
ちいちゃんが根を上げた。
「ちいちゃんまだ1時間もやってないよ!?」
そんなちいちゃんに、驚いてしまう。
そんな私とちいちゃんの会話に、「じゃあ、あと30分やったら一回休憩しよう!!」と、丁度良く、クッションを入れるさくらちゃん。
美香ちゃんはクラスも違って、毎日バイト生活を送っているから、学校でお昼ご飯を一緒に食べる以外は、会うことは少ない。
だけど、さくらちゃんは同じクラスで毎日のように一緒にいて、もう気心の知れた仲になっている。
弓道場に行ったり、恋愛トークをしたり、仲が日に日に深まっていて、ちいちゃんと私の性格も既にわかっているようだ。
さくらちゃんは第一印象から変わらず、ハキハキした性格で、笑うと笑顔が可愛い。
本人は言いたいことをすぐ何でも言っちゃうところが欠点なんだっていつも言ってるけれど、
裏表がなくて気持ちがいいと思う。
言いたい事を素直に言える彼女は、私には無いものを持っていて、少し羨ましいと思える時もあるんだ。
3か月も毎日一緒にいると、お互いの事がわかってきていて、一緒にいると楽しくて。
仲良く出来る友達が出来て、本当に良かったと思う。
「よし!休憩にしよう!」
さくらちゃんが一旦休憩!と切り出した。
「お菓子持ってくる!」とちいちゃんが階段を駆け下りて行く。
「疲れたね。」
そう言ってふぅっと小さなため息をもらす私。
「こんなに集中することないからねー。」
さくらちゃんはそう言うと、背伸びをして、後ろにあるちいちゃんのベットにダイブした。
「このまま寝たーい!!」
さくらちゃんはちいちゃんのベットでゴロゴロし始める。
ちいちゃんの家で集まるのも、今では、自然な事になっていた。
「おまたせー!」
ちいちゃんがお菓子とジュースを持ってくる。
「おいしそー!!」
「昨日クッキー焼いたのー!!」
ちいちゃんお手製のクッキーをみんなで食べながら、やっぱり3人が集まると始まる女子トーク。
「ちいちゃん今日なんで彼氏と会わないの?」
さくらちゃんが聞く。
「部活だってー。高体連前だから、練習するって。」
「あー、そーだねー。この時期1番練習してたかも。懐かしー。」
さくらちゃんも、高校では弓道部だったから、気持ちがわかると言っている。
そうだ、去年の今頃は、私も受験に部活にって大変だった時期だ。
懐かしいなと思いながら、2人の会話を聞いている。
「さくらは?今日は?彼氏は?」
ちいちゃんがクッキーを食べながらさくらちゃん聞く。
「なんかさぁ。最近マンネリなんだよねー。」
さくらちゃんがジュースを飲みながら、不服そうな顔をして答えた。
さくらちゃんは高校1年の時から彼氏と付き合っていて、元は幼馴染みの関係だったらしいから、付き合いは長い。
その彼氏は今、大学に通っていて、さくらちゃんからは、遊園地に行ったとか、映画を見たとか、そんな話を聞いていたから、ちいちゃん達のように仲良しなのかと思っていた。
だから、マンネリという言葉に、少し驚いてしまった。
「マンネリなのー?この前ラブラブな話してたじゃん!付き合い長いとそうなるのー??。」
ちいちゃんも、意外だと言っている。
「うん。なんか、会ってもときめかないし、あっちの方もマンネリだしー。」
さくらちゃんの言葉の意味がわからず、一瞬間が空く。
あっちのほう??
、、、!!!
少し考えて、意味を理解した私は顔を赤らめてしまったんだ。
あっちって、、、あのこと、、だよね??
そうか、さくらちゃんはもう、、。
そうなんだ、、、。
そう思うと、また更に顔が赤くなる私。
「ちいちゃんと響は??。あっちの方はマンネリじゃないの?」
「え!?!?」
さくらちゃんが急に話を振るから、動揺してしまい、飲んでいたジュースを吹き出しそうになる私。
「響の彼、年上だもんねー。すごいリードしてくれそうだよね!いいなぁ。」
羨ましいなぁと言うさくらちゃん。
えー!!??
さくらちゃん、勘違いしてるよ!!!
「そんな!うちらは全然そんなことまだまだだよ!!ねえ!?!?ちいちゃん!」
動揺しつつ、ちいちゃんに同意を求めたのだけれど、ちいちゃんは顔を赤くして、下を向き、モジモジしている。
明らかにちいちゃんの態度がおかしい。
さっきから、何も言葉を発していないし。
ちいちゃんなら私よりも真っ先に否定しそうなのに、なんで??。
なんだか、いつものちいちゃんじゃない気がするんだけど。
「ちいちゃん?。」
声をかけても、下を向いてモジモジして、何も言わないちいちゃん。
やっぱり、変だ。
いつものちいちゃんではない、明らかにおかしい態度に、長い付き合いの私には、ピンときてしまったんだ。
え!?!?
ちいちゃん、、、もしかして!!!
予感は的中したんだ。
「実はー、この前ー、、、」
小声でちいちゃんが、顔を赤らめて話始める。
「えーーー??!!」
ちいちゃんの声を遮って、大声を上げてしまう私。
自分の声の大きさに、ふと我に返って、自分でもびっくりしてしまったくらいだ。
「いつ言おうか迷ってたんだけどぉ。」
ちいちゃんは、上目づかいで私を見る。
「いつ!?!?」
「5月の連休の時にぃ、、。」
5月の連休!?!?
そういえば、ちいちゃん、連休に渚と一泊旅行くって言ってた、、、。
旅行前に、その話を聞いた時は浩介もいて、
浩介に散々「エロ旅行だろ」って茶化されていたんだけれど。
「違う!結婚するまでしないんだもん!!!」って言い張っていたちいちゃんの言葉が、頭をよぎる。
あんなにしないって言ってたのに。
結婚するまでしないって、、、。
だから、2人は清い関係なのかとずっと思っていたけど、現実は違ったようだ。
まさか、ちいちゃんと渚が、そんな関係になってたなんて、、、。
「なになに、ちいちゃん、経験したのー??。おめでとー!!この時期が1番幸せで楽しいんだよねぇ!いーなぁ!羨ましい!」
さくらちゃんはそう言って、しきりに羨ましがっているけれど、私の頭は混乱するばかりだ。
まさか、ちいちゃんが!!
そうか、ちいちゃん、ついに、渚と、、。
その状況を少しずつ飲み込めてきた私は、
ふぅっとため息をついてしまった。
そうかぁ。
みんな、そうなんだ、、、。
ついに、ちいちゃんも、かぁ。
そうかぁ。
「そんなに驚くってことは、響はまだなのね。」
さくらちゃんが、ニヤニヤしながら私を見る。
「えっ!」
顔が赤くなる私。
今まで、そんな話はしたことがなくて、
もちろん、ちいちゃんとも今までなかった。
ちいちゃんは、なによりその手の話は嫌いだったからというのもあるけれど、そういう話は、すごくプライベートな部分だって思っていたから、言葉にするのも恥ずかしくて。
私の態度で、さくらちゃんは察したみたいで、
「響の彼氏27でしょー??だからてっきり、もう経験済みなのかと思ってたー。」と言う。
さくらちゃんには、そう見えていたようだけれど、実際は全然違うんだよなぁ。
「付き合い長いじゃん?高3からだっけー?」
「、、、うん。」
確かに、付き合ってからは1年以上にはなるけど、先生と私はまだそんな関係じゃない。
卒業してから3ヶ月経って、会うたびに、どんどん大きくなる「好き」っていう気持ち。
私もいつかはそういう時が来るのかな、、、なんて思う時もあるけれど。
今の私と先生には、「その時」は、まだまだ先な事のように思えていて。
一線を超えられない何かが、私と先生の間にはあるから、、、。
それとなく、その話を2人に相談してみると、
「それってさー、なんか心配じゃない?」と、さくらちゃんが言ったんだ。
え?
心配??
「付き合ってて、好きな女に手を出さない男って、私は考えられないんだけど!」
え、そうなの??
「響それ、ちゃんと愛されてる??」
さくらちゃんの核心をついた言葉に、一瞬ドキッとする。
愛されてる??
一線を越えるって事は、、、それは愛されているという事に結びつくんだ。
それは、なんとなくわかってはいるけれど、
さくらちゃんの言葉で、先生との距離に少し不安を感じてしまう。
きっと先生は私のことを大切にしてくれているんだと思う。
そう信じたいけれど、でも、私はもっと一緒にいたいと強く思う時もあって。
そんな時でも、必ずやってくるタイムリミット。
一線を超えられない距離や、何かを遮る壁を、確かに最近感じることが多くなっていたから。
なんでだろうとは不思議に思う事もあって。
「そういう雰囲気になっても、先に進まないのは、私に原因があるのかな?」
こんなことを言葉に出すのは恥ずかしいけれど、、、知りたい。
みんなどうやって、壁を超えているんだろう。
どうやったら超えられるんだろう。
私の何かが欠けているんだとしたら、、、。
勇気を出してそう聞くと、さくらちゃんは
ニヤニヤした顔で私を見る。
「響、先に進みたいんだ??。」
さくらちゃんの言葉に顔がみるみる赤くなる。
私、、、先に進みたいの??
そう思っているの?
自分でもよくわからない。
そんなに、焦っているつもりは無いと思っていたけれど。
ただ、一緒にいても、なかなかそういう雰囲気にならないのは、私に原因がある気がして。
「いやいや!!今のままでも全然いいの!!
ただ、、よくわからないけど、何か壁があるみたいで。私が悪いのかなぁとか思ったりして。」
率直な今の気持ちを2人に伝える。
「うーん、なんだろうねぇ。伊藤頭固いからなぁー。」
ちいちゃんが首を傾げながら言う。
「そういう雰囲気になったら、自然にそうなるけどねぇー。」
さくらちゃんも、そう言って首を傾げている。
自然に、、、かぁ。
そうか。
そういうものなのか。
先生の気持ちが読めなくて、もどかしくなる。
まだまだ先の話なのかなぁ。
2人の話を聞いて、考え込む私に、さくらちゃんが悪気のない、屈託ない笑顔でこう言ったんだ。
「手を出してこないってことは、響を女として見てないか、響に魅力がないか、他に女がいるかじゃないの?」
!!!!
他に女!?
いや、それは無い、、、とは思うけれど。
女として見られてない、魅力がない、、、は、当てはまるところがあるような気もする。
やっぱり、子供だからなのかなぁ。
「伊藤は響のこと大事に思ってるんじゃないかなー?。だから、そういうのは慎重になってるとか??よくわかんないけど。」と、ちいちゃんが優しい言葉をくれる。
だけど、なんだか気落ちしてしまう私。
「生徒だったっていう手前があるからねー。安易に手は出せないかー。」
さくらちゃんの言葉の意味もわかる。
だけど、先生の本意はわからなくて謎だ。
私と先生の関係は、さくらちゃんと美香ちゃんは知っている。
入学したての頃は言い出せなくて隠していたけれど、仲良くなるうちに、言ってもいいかなっていう気持ちに変わってきて、最近、意を決して伝えたんだ。
教師と生徒という関係に、2人とも最初はびっくりしていて、少し引いていたところもあったんだけど、今では、応援してくれていて、色々アドバイスをくれたりもする。
「でも、もう卒業したんだし、普通のカップルと同じじゃん。そうだ!響から、ちょっと試してみなよ!!」と軽い口調で言うさくらちゃん。
え!!!!
試す!?!?
「そんな!!出来ないよ!」
試すって!
だいたい、何をどうやって、、、。
私にそんなスキルは無いのはわかってるはずだ。
「もう少し一緒にいたいとかさぁ。いい雰囲気になったら、ちょっと言って誘ってみるの!」
さらっと、さくらちゃんは言うけれど。
そんな!!
誘うって!!!
私から!?!?
想像してみるけれど、私にはかなりハードルが高い。
「うーん、、。」
考え込む私。
「あはは!響の性格から考えたら無理か。」
そう言ってさくらちゃんは笑っている。
超えられない壁を自分から壊すなんて、考えただけで顔から火が出そうになるのに。
でも、この壁がなくなればいいとは何度も思ったことがあって、、、。
ずっと一緒にいたい。
もっと触れたい。
もっと先生を感じたい。
そう思うのは、私だけなのかな。
先生はそう思わないのかな。
私に魅力がないから?
女として見てないから?
子供だから?
それとも、、、好きじゃないから??
いろんな不安が心の中で渦を巻く。
「ちいちゃんは?なんでそーなったの!?結婚するまでしないって言ってたじゃん!」
「えー、なんかー、くっついてたら、離れたくないなーと思ってー。そしたら自然に〜??
やだー!響ー!これ以上は聞かないでよー!!超恥ずかしい!!」
ちいちゃんは顔を真っ赤にして、両手で顔を押さえながら、恥ずかしそうに言う。
そんなちいちゃんを見て、冷静に分析する私。
自然に、、、かぁ。
そうかぁ。
顔を赤くしているちいちゃんに、さくらちゃんが言った。
「なに、恥ずかしがってるのさ!いーじゃん!いーじゃん!!愛されてるっていう証拠じゃん!!」
愛されている証拠、、かぁ。
そうか、それは、愛されてる証拠って思えることなのか。
隣で恥ずかしがっているちいちゃんは、とても可愛くて、女の子っぽくて、いいなぁと思ってしまう。
ちいちゃん、嬉しそうだ。
羨ましいな。
そんなちいちゃんを見て、素直に私も欲しいと思ったんだ。
愛されてる証拠というものが、、、。
先生はどう思っているんだろう。
知りたいけれど、そんなこと、絶対に聞けない。
先生と、抱きしめあったりする事はあっても、その先には行かなくて、なんとなく壁がある事は前から薄々感じていた。
キスをして抱きしめてくれて、もしかしたら、、、って思うことも今まで何度かあったけれど、それでも、その先には進めない私達。
見えない壁が私達にはあるんだ。
その壁って、一体何なのかな。
「伊藤も、なんでそんなに頑なかなぁ?」
ちいちゃんが、ボソッと言う。
「わかんない。」
先生の気持ちはわからないんだ。
「もう!じれったい!!やっぱり響から誘ってみなよ!響の事好きなら、絶対受け入れてくれるって!!」
さくらちゃんはそう言うけれど、それはすごく勇気のいる事で、私には出来る気がしない。
「さて、女子トークはまた後で!続きやろー!」
さくらちゃんの声かけで、再び課題を広げて、勉強し始める2人。
2人の切り替えの速さに1人ついていけず、しばらく頭の中が混沌としていた。
先生、私のこと、どう思ってる??
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