夏の始まり

9/17
前へ
/17ページ
次へ
「おっはよー!響!」 次の日の朝、短大の教室で、ちいちゃんに元気よく声をかけられた。 「おはよう。ちいちゃん」 「ん?あれ?なんか響目腫れてない!?!?」 昨日の夜泣き疲れてそのまま眠ってしまったようで、今日の私はひどい顔をしている。 そんな私に気づいたさくらちゃんも、 「なになに!?。響、どーしたの!??」 と駆け寄って心配してくれる。 「うん、、、ちょっとね。昨日寝られなくて」 2人には言いづらい。 壁を越えようとして、拒否されたなんて、、、恥ずかしくて言えない。 授業は始まったけれど、今の私には授業も頭に入る状態じゃなくて。 今日はバイトも休みで、よかったと心底思った。 お昼休み、食堂で、ちいちゃんが本気で心配してくれている。 「なんかあったのー??。響ぃ、心配だよー。」と、食欲もあまり無い私を心配そうに覗き込む。 朝から腫れていた目元は少しずつ元に戻りつつあるけれど、、、。 隠してもおけない、、、かと思い、ちいちゃんに、昨日の出来事を話す。 すると、、、。 「えーー!なにそれ!伊藤ひどい!!」 ちいちゃんは本気で怒っていて。 「いや、唐突に困らせること言った私が悪いよ」 そう言って、ちいちゃんの怒りをなだめようとするけれど。 「響がせっかく勇気出して言ったのに、拒否るとか、ありえないから!!」と、ちぃちゃんは相当怒っている。 だけど、私は怒りより、悲しみの方が大きい。 ショックで、昨日の事は思い出したくないくらい。 「なんで伊藤そんな態度したのかなぁ?」 「わからない。」 もしかしたら、、、私のこと好きじゃないのかもしれない。 考えれば考えるほど、どんどんマイナス思考になっていく。 「そうだ!!!男の気持ちは、男に聞くのが1番だよ!」 ちいちゃんはそう言って、携帯を取り出した。 「え!?ちいちゃん??!!」 ちいちゃんは早速、誰かに電話をし始める。 その誰か、、というのは大体想像がついていて。 予感は的中する。 「あ、浩介?今日暇??」 そう、ちいちゃんは浩介に電話し始めたんだ。 「ちょっと、ちぃちゃん!浩介に何言うつもり??」 電話しているちいちゃんを止めに入るけれど、ちいちゃんは全く聞きもせず、 「響が悩んでるんだって!!浩介ならわかるでしょー??」と、浩介に話し始めている。 こんな話、浩介になんかしたら、笑われて、ちゃかされるのが目に浮かぶ。 「じゃあ、5時にマックねー!!」 そう言って電話を切ったちいちゃん。 「ちいちゃん、浩介になんか恥ずかしくて言えないよ。」 ため息まじりに、ちいちゃんに言う。 「大丈夫だって!浩介も一応男なんだから、なんかヒントくれるかもよ??」 ちいちゃんはそう言うけれど、まともな答えなんて期待できない気がする。 浩介だしなぁ、、、。 ちいちゃんも今日はバイトが休みらしく、 浩介とは5時にマックで待ち合わせをしたみたいで。 はぁあ、、、と、大きなため息をついた。 浩介かぁ。 浩介に、こんな話するのも恥ずかしい。 どうせ、バカにされて終わる気がする。 先生の気持ちは先生にしかわからないんじゃないのかなぁ? 「浩介、伊藤の気持ちわかってるところあるじゃん!」と、ちいちゃんは言うけれど。 昨日の先生の表情を思い出すと、胸が痛い。 私の心がとても痛い。 先生のことが好きなのは変わらない。 誰よりも先生が好き。 だから、なおさら、胸が痛くて苦しくなる。 もちろん、体を重ねることが全てじゃないと思ってる。 それより大切な事があるのもわかる。 わかってるんだ。 だけど、、、。 私も欲しかったんだ。 ちいちゃんや、さくらちゃんのように、愛されている証拠と言えるものが、壁の向こうにあるんだったら。 先生と会う回数が増える度に、自然と思うようになってきた、この気持ちは、偽りない今の私の本当の気持ちだから。 でも、その気持ちは、先生には受け入れてもらえなかった。 どうして? 先生の気持ちがわからない。 卒業してから3カ月。 確かに、まだ月日は浅いけれど、私の中では、この3カ月はとても大きくて。 誰かに隠れる必要もなくて、堂々として一緒に過ごせる時間が増えてきたことで、どんどん気持ちも大きくなってきていた。 欲張りになっていたのかもしれないけれど。 先生に合わせる顔がないよ、、、。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加