DISC2『silence』

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さて、どうしたものか。 夏目先輩から課題を出されてはや数週間。私はというと、学校の中庭に設置されているベンチに座って頭を抱えていた。 只今、昼休み。 いつも一緒にお昼を食べている小堺さんは、今日は図書委員の当番でいない。そういう日は比較的人が少ない中庭のベンチでお昼を食べる。 学校の居場所人気ランキング上位に浮上するであろう中庭がなぜ比較的人が少ないかというと、この学園の造りに関係する。 校舎と校舎の間にある中庭であれば、生徒が行き来する憩いの場になるはずだが、この学園の中庭は校舎の間と言っても、“新校舎”と“旧校舎”の間だ。 つまり、よっぽどの事がない限り通ることすら無い場所に、申し訳程度に造られた中庭なのだ。 真上にある渡り廊下のせいで日中はほぼ日が当たらず、花壇さえ置いていない。このベンチも、余ったからとりあえず此処に置いておこう感満載の不自然さ。さらには食堂からも校庭からも一番遠いとなると、昼休みに足を運ぶ生徒は皆無に等しい。何故、自販機が一つだけ設置されているのかも謎だ。 そんな場所で女生徒がひとりでベンチに座り頭を抱えていたら、それはそれは目立つ。え、いじめられてんの?ってなる。決してそんな事実はないけど。 それでも頭を抱えずにはいられなかった。 夏目先輩に借りたタブレットPCを膝に置いて、「あー」だの「うー」だの一人で唸る。 あれからあの人、本当に使い方教えずに帰った。びっくりするぐらい華麗に放置された。 まじか。鬼畜か。鬼教官でももう少し指導してくれると思うんですけど。 なので仕方なく、適当に弄るしかなかった。時には動画投稿サイトの説明を見ながら覚えたり、バイトの時に少し宗助さんに教わったりしながら何とか『fanfare』の打ち込みが完了した。 もう頭に詰め込みすぎてショートを起こす寸前だった。 「それにしても…」 本当によく出来た楽曲だな。 聴いていてとても心地が良い。それなのにほんの少しの焦燥感を覚える曲。 イヤフォンをタブレットに繋いで、自分が打ち込んだファイルを再生する。 目を瞑って、流れる音に全神経を研ぎ澄ました。
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