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「うん」
「二カ月、音沙汰無しでしょ」
グラインダーは音を立てて、豆を砕いた。
「そうだね」
南くんはあれ以来、店に寄り付かなくなってしまった。コーヒーが飲めないのでは無理もない話かもしれない。
「それでホッとした顔してるんだもんね、七奈は」
ドリッパーにお湯を注ぐと、下にあるコーヒーサーバーにコーヒーが抽出される。抽出したコーヒーを紙コップに注ぎ、美香に手渡した。
美香は口をつけると、「よく分からないけど、美味しいんじゃない」と一言。私は苦笑いする。
「やっぱ、お父さんに飲ませるべきだって」と美香。
「それは……」
「ゆくゆくは継ぎたいんでしょ。毎週じゃない、この勉強会」
私は微かに頷いた。
「お父さんに正直に話して、修行させてもらうべきだよ」
「修行させてもらったら、もらったで……」
「あー、その話はうんざり!」
美香は私が重ねるジレンマの上に、三角の積み木を重ねた。
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