バス

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 それが過去のものとはいえ、南くんとの共通点が見つかり、嬉しくなった。嬉しくなったところで私の中の小悪魔がささやく。「今、ひょっとして幸せ?」と。おかげで素直に喜べない。 「成瀬さんは、お店継ぐの?」  私はあの店が好きだった。手伝いも自発的にしている。将来はもちろん……。しかし言葉にはできなかった。夢を形にし、それが叶ってしまったら、とんでもない不幸が訪れるのではないかと足がすくむのだ。そもそも幸や不幸で一喜一憂している私が、お店なんてやっていけるだろうか。  私は言葉には出さず、一度だけ頷いた。 「お父さんは知ってるの?」  歯切れ悪く、「いや……ううん」と小さな声で呟いた。 「赤ちゃんって、ちゃんと家を選んで生まれてくるって聞いたことない?」  首を横に振った。 「選んでるんだって。だから、僕たちがこの家に生まれてきたのは、意味があると思う」 「私はあの店を継ぐために?」 「そうかもしれないよ」  ふいに朝日が私たちを照らした。その鮮やかな日差しに一瞬、口元が緩んだ。しかし、小悪魔が私の視界を横切る。その光に希望を見いだせるほど、今の私は素直ではなかった。
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