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南くんにスタイリング剤を返すきっかけを掴めず、気付くと昼休みになっていた。彼はいつも学食で食事を取るので、この時間、教室にはいなかった。
「四限連続って、信じられる?」
私はお弁当箱の底を箸で突っつきながら言った。
「すごい確率だよね」
美香はどこか抜けた表情でそう呟いた。スタイリング剤を貸さなかったせいなのか、彼女は朝から元気がない。
「今日の日付が私の出席番号でもないのに、連続で授業中に当てられるってさ……」
「不運ってやつ」と美香がポツリ。
朝のバスで南くんと楽しく話したことが招いた結果なのだろうか。確かに私はあの時、小さな幸せを感じていた。幸と不幸の帳尻が合ってしまったようだ。
そうなると、南くんに話しかけるのが怖くて仕方ない。
「南くん帰って来たよ」
美香が言う。南くんは自分の席に座り、窓の外を眺めていた。休み時間中は、ずっと誰かと一緒にいて、話しかけづらかったが、今は一人だ。
返すなら今しかなかった。
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