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 トイレの鏡を見ながら、跳ねた襟足にスタイリング剤をスプレーした。しっとりと濡れた髪を手でとかすと、寝癖はすっかりなくなった。  隣にいた美香も、自分の髪の跳ねが気になるようで、「私もいい?」とねだった。 「これ、南くんに借りたやつだから。勝手に使ったら悪いよ……」 「あっ、そっか」   美香はにんまりと笑顔を作った。彼女は私が南くんに好意を持っていることを知っている。 「少し跳ねてない?」   美香は、後ろ髪を鏡に映そうとするが、上手くいかない。 「気にならないけど……」 「本当?」 「コンパクトミラーなら貸せるけど、使う?」 「助かる!」   私の鏡を受け取ると、合わせ鏡をしながら、跳ねた部分を確認する美香。 「ついでに、シュッと……」   彼女は調子よくウインクをし、スタイリング剤を催促する。私はわざとらしく手を打ち、「あっ、もう行かないと」とその場を立ち去った。美香の「あー、ひどい」という声が、トイレから響いた。
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