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アレックスの長い舌が乳首に巻きついて蓮は甘い声を上げ続けていた。直接触ってもらえないのに尻穴からは大量の愛液が流れ出てシーツを汚していた。
「ねぇ…アレックス、早く……」
「ダメだ。もっとおまえを愛したい」
身体中をゆっくりと愛撫され、蓮は甲高い悲鳴を上げた。焦らされ続け、もう欲しくてたまらなくて、自分でペニスを擦り上げる。アレックスの猛り立つものを見て、思わずその前に跪いた。
「アレックス……」
舌を精一杯出して、それを舐め上げる。大きくて熱くて、たまらない。唇で何度も口付けるとアレックスが蓮の身体を持ち上げた。ゆっくりと尻穴に狙いを定めて蓮の身体を落としていく。アレックスの肩にしがみつきながら蓮はぎゅっと目を瞑った。腹の奥までアレックスを感じる。じっくりと揺さぶられて蓮はだらしなく足を開いた。
「あんっ……いいっ……もっと欲しい……」
「蓮、愛している」
「アレックス」
「初めて見た時からおまえのことを愛していた」
涙がぼろぼろと零れてアレックスの体毛を濡らした。
「この馬鹿者が」
「ごめんなさ……い」
火照ったうなじに舌が這う。恐れと嬉しさが混じって蓮は小さな子供のように嫌々と首を振る。
「おまえは私のものだ」
「アレックスぅ……」
がぶりとうなじを噛まれた瞬間、蓮は激しい快感で達していた。しばらくしてアレックスも蓮の中に熱い体液を放出する。それをすべて受け止めて、蓮はアレックスの胸の中に顔を埋める。愛する人のそばにいられることがこんなに幸福なことだとは思わなかった。蓮は自分から唇を重ねて、舌を絡めた。
目覚めると、いつも渡される避妊薬は無かった。面映ゆい気分でアレックスの言葉を待っているとクスリと笑われた。
「もう避妊薬はいらないだろう? 私と番になったのだから」
蓮は首筋に付けられた痕をなぞりながらこくりと頷いた。アレックスと番になった。それを噛み締めていると急に気恥ずかしくなって蓮はアレックスの胸の中に飛び込む。優しく抱きしめられてほっとする。
「私の番は甘えたがり屋だな」
「アレックス」
「うん?」
「愛してる。もう離れない」
「離さないよ」
幸せな気持ちに満たされて蓮は目を閉じる。冷たく、長い夜が明けたのだった。
「ウソ! 蓮、Ωだったの!」
まだ疼く傷の上には大きな絆創膏が貼ってある。アレックスが盛大に噛んだおかげで店内に入るなりすべてのホストが蓮に釘付けになった。
「今まで黙っていてすまない。じゃ、仕事、始めるぞ」
恥ずかしさと誇らしさが混じった気持ちを一時封印して開店に向けた準備を始める。瞬が隣りにやってきて、慌てたように尋ねてきた。瞬はアレックスとのことを知っているからまずそれを話さないとな、と思った。
「自棄になって誰かと番っちゃった? それとも噛まれちゃったの?」
「違います」
「誰だよ! 心配じゃん!」
「心配かけてすみません。でも相手はアレックスだから」
「……ウソでしょー!」
店内がざわつくくらい大きな声で瞬は叫んだ。唇に指を当てて蓮は周りを見渡した。
「だって、オーナーには魂の番が!」
「それ、いったいどこからの話なんですか?」
「……あれ?」
瞬は腕を組んであちらこちらを眺めながら考えている。やっぱりただの噂だったのだ。それを確かめもせず鵜呑みにしてアレックスに接していた自分を蓮は恥じた。
「いったいどっからの話だったんだろう?」
「そういうことで」
「そういうことで、って、ちょっと蓮、詳しく話してよー!」
「ホストは辞めるんだ」
アレックスにそう言われた。だが続けると言うと、他の客と一緒に楽しそうな姿を見るのが嫌だから、とそっけなく言われた。アレックスの違う一面を見て蓮は嬉しさで胸がいっぱいになった。
いずれ辞めるにしても今は続けたい理由としてホストが天職だと思っていることと、存外淋しい人々が集う場所を大切にしたい、ということだ。アレックスもそう思って続けているに違いない。蓮は枕営業などをしたことはないし、過剰なアフターもしたことがない。割と健全なホストだと自分では思っている。そして、まだアレックスと少しは対等な関係でいたい。αとΩで対等などあり得ないと人はいうかもしれないが、少しでも自立してアレックスの力になりたいと思うのだ。アレックスは渋々頷いたものの、妊娠させる気満々だった。そうなれば蓮は子育てに忙しくなるからだ。
幸せとはこんな近くにあるものだと思わなかった。そしてその宝物を心から大切にしたい。
今日も蓮はアレックスの視線を感じながら仕事に勤しむ。この幸せを少しでも誰かにわけてあげられるように。
了
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