第14話 さねまさ

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「実雅さん」 その日も品川さんは僕の所へやって来た。 「食事に行きましょう」 彼女の距離感に 「少し、離れて」 そう言った。ただ、違和感しか無かったから。 「あ。すみません。私、人との距離が近いらしくて。恥ずかしい!」 そう言って、両手で顔を押さえた。 「あれから、彼女と会いました?」 「いや、まだ」 そう言って、彼女と歩く。 途中、何度かつまづく彼女が 「すみません、私すぐこけちゃうんです。背中持っても構いませんか?」 ならば、スニーカーでも履けば良いものを。彼女の足元はかかとの細い靴。渋々ながらOKした。怪我でもされたら更に面倒臭い。 初めて雅実を見かけた飲食店の前に差し掛かると 中に雅実の姿をすぐに見つけ、歩み寄った。 「雅実も来てたんだ」 そう言った。 意識せずとも、顔が綻ぶのが分かった。 自分が、いかに雅実に会いたかったか、逸る鼓動が教えてくれた。 「こんにちは」 品川さんも挨拶を交わす。 ……雅実は、何だか元気がない。 それが気になった。 正直、品川さんを置いて、この場にいたいほどに。 「あー、ご一緒……」 そう言い掛けた雅実に 「いえ、私達は……雅実さんがいらっしゃると……ちょっと。ねぇ?」 そう言って僕の顔を見る品川さんに気付く。 そうか、雅実の事を話すのに雅実のいる場所では無理だ。 それに、この想い出の場所には、雅実と二人の時に、来たい。 想い出とは言っても、僕の一方的な想い出にすぎないのだが。 「場所、変えようか」 彼女にそう言った。 「じゃあ、雅実。また、連絡するね」 そう言って雅実に背中を向けた。 後で連絡しよう。そう思っていた。
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