第19話 まさみ

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「ま、まずは……ですね」 改まると、声が上擦る。 ついでにさっき、泣いたしなっていう恥ずかしさも上乗せされる。 「うん」 しっかりこっちを見ての、優しい相槌。 ……これは得意の顔面を使っての…… じゃないよね。 「飲食店で偶然出会った日……品川さんと一緒でしたよね?」 「そうだけど」 ……う、さっきも聞いたけど……とでも言いたそうな怪訝な目に、怯んだものの 「彼女、田中さんに、つかまって……歩いてた 」 「……ああ、彼女、すぐつまづくんでね」 だから?とでも言いたそうな目に怯んだものの…… 「どう見ても、距離が恋人っていうか……」 「恋人じゃないよね」 何を言ってんだというような目に怯んだけれど 「すぐつまづくなら、手、手繋いであげたらいいでしょ!?」 ……ちょっと間違えたか。 田中さんの目が見開かれ、その目に少し怒りが乗る。 「転けないようにという意味で手を繋ぐのは、親子とか……そうなら必要かもしれない。 でも、大人の彼女に必要だとは思わない。 それに、今は雅実としか繋ぎたくない。繋ぐ事に意味があろうが、無かろうが……繋いだ時の幸せは、雅実としか……」 そこまで言うと、田中さんは私と繋いだ手を離し、俯き、頭を抱えてため息をついた。 顔だけを横にして、私の方を向くと 再び私の手に触れる。 「……“いいもんだね”そう思うのは……俺だけなの?」 上げられた瞳がせつなげに、もう一度伏せられ、手はすぐに離された。
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