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「ま、まずは……ですね」
改まると、声が上擦る。
ついでにさっき、泣いたしなっていう恥ずかしさも上乗せされる。
「うん」
しっかりこっちを見ての、優しい相槌。
……これは得意の顔面を使っての……
じゃないよね。
「飲食店で偶然出会った日……品川さんと一緒でしたよね?」
「そうだけど」
……う、さっきも聞いたけど……とでも言いたそうな怪訝な目に、怯んだものの
「彼女、田中さんに、つかまって……歩いてた 」
「……ああ、彼女、すぐつまづくんでね」
だから?とでも言いたそうな目に怯んだものの……
「どう見ても、距離が恋人っていうか……」
「恋人じゃないよね」
何を言ってんだというような目に怯んだけれど
「すぐつまづくなら、手、手繋いであげたらいいでしょ!?」
……ちょっと間違えたか。
田中さんの目が見開かれ、その目に少し怒りが乗る。
「転けないようにという意味で手を繋ぐのは、親子とか……そうなら必要かもしれない。
でも、大人の彼女に必要だとは思わない。
それに、今は雅実としか繋ぎたくない。繋ぐ事に意味があろうが、無かろうが……繋いだ時の幸せは、雅実としか……」
そこまで言うと、田中さんは私と繋いだ手を離し、俯き、頭を抱えてため息をついた。
顔だけを横にして、私の方を向くと
再び私の手に触れる。
「……“いいもんだね”そう思うのは……俺だけなの?」
上げられた瞳がせつなげに、もう一度伏せられ、手はすぐに離された。
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