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「田中さん」
そう呼ばれて振り返った。
そこには見覚えがあるような、ないような女性。
……記憶を辿る。
ああ、社内の人間か。
「何か?」
「私の事、覚えてくれてたんですね、嬉しい」
品川透子……だったかな。
「まぁ」
そう言った。
幸い、頭はいいんでね。
「お茶でもしませんか?」
「何の為に……」
「うふふ、実雅さんって、女性苦手ですよね?」
彼女の言葉は多少語弊がある。
僕が苦手なのは、“女性”じゃなくて“人間”だ。
ただ、なぜ彼女がそんな事を言ってくるのかは理解が出来なかった。
それこそが、“苦手”ということなのだろうか。
少しばかり、彼女に時間を作る事にした。
以前なら考えられなかったけれど。
コミュニケーション、それを学ぶ機会だと思うことにした。
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