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side 凪
みきの父親は、弱い男だ。
自分の悲しみに囚われて、
息子であるみきの悲しみを救わず、
逃げている。
でももしもみきが死に、それが自分のせいだと思っていたら、
俺は耐えられるだろうか。
愛する人に似た、しかもΩの息子を支えていくことができるだろうか。
俺は光を探した。
みきの父親に会わなくてはならない。
詳しくはみきの許可なく話せないが、と前置きして、
光にみきの父親のことを聞く。
思いあたることもあるようだった。
「みきの父親は、一度でも面会にも来ていない。
ちょっと待って、初等学園が同じ奴がいたはず」
光はその生徒を連れてきてくれた。
みきの父親は、洋菓子屋はやめたが、近くのアパートに住んでいるらしい。
母親が亡くなり、みきは明るさを失ったそうだ。
「お母さんが死んだ頃、
検査でΩってわかってクラスでからかわれていたみたい。
葉山、美人だから目立ってたし。
昔は明るくて、よく笑う奴だった」
俺はみきの父親に会いに行くことにした。
でも、みきの次の発情期までは時間がない。
また苦しい日々を過ごさせることになるのか。
みきを救いたい。強く思う。
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