side 凪①

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side 凪①

オメガ中等学園の卒業後説明会から優希さんはすごーくご機嫌で帰ってきた。 「俺も天使に会ったよ」 なんとみきちゃんは優希さんの大ファンとのこと。 色々話したみたいだけど、内容は秘密だそうで、教えてくれない。 「俺、書斎にいるから」 絵本作家モードに入るみたいだ。 うちには「書斎にいる優希さんの邪魔は絶対にしない」という鉄の掟がある。 破れば優希さんはこの家を出てしまうだろうから、決して破れない。 兄昴はパートナーと過ごせない週末が決定し、表情が暗い。 大学生らしく夜遊びにでも行け! 見た目は結構いいし、優希さんがそばにいないクールな兄なら、 遊び相手に困らないだろう。 兄は学校以外の時間は全て優希さんと過ごしたいらしい。 執着心もここまでだと、清々しいな。 優希さんもよく嫌にならないなと思うときもあるが、 今日みたいに兄を寄せ付けない日もあるし、2人しかわからないものなのもしれない。 優希さんはオメガ中等学園卒業のときには絵本作家としてのデビューしていたから、卒業後は一人暮らしもいいかなと思っていたそうだ。 でも兄が間違いなくストーカー化することと、 うちの両親が優希さんと暮らしたがったこと、 でも一番の理由は八重樫家の広い庭が気に入ってうちに住んだそうだ。 優希さんの好きな植物が溢れている明るい庭。 子どもだった俺は強くて、優しくて、美しい義兄を歓迎した。 少し大きくなった俺は、報われない恋に苦しんだ。 兄が優希さんの肩を抱いて、部屋に消えるのを何度も見送った。 あなたは、どんな顔で、どんな声で、兄に抱かれているのだろう。 今まで誰と付き合っても長続きしなかった。 誰を抱きしめても、あなたの顔が浮かんだ。 あなたは、あまりにも遠く、手を触れることもできない。
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