8.夏休み

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8.夏休み

オメガ中等学園では世間では夏休みという期間でも、もちろん学園からは出られない。 一学期の修了式の日、クラスから2人が卒業した。 ティーパーティーで出会ったαの家に行くらしい。 夏休み期間は特別なプログラムがあって、好きなことや苦手なことを学べる。 俺はというと、毎日補習。 気がすすまないからと逃げていたαについての授業もできるだけ受けてみようと思った。 αについての授業がある時間は、学園の腕時計を机の中に隠して、隠れ家に脱走することにしていた。 そして謹慎という名の懲戒処分となる。 運が悪く見つかってしまったときは、仕方なく授業を受けていた。 この学園では、留年も退学もないから、許可されれば何年生の授業でも補習が受けられた。 木嶋先生の誘いもあった。 Ωである木嶋先生が学園に来てから、生活科の授業も段々とΩの役に立つ内容になっている。 木嶋先生から生活科の「オメガとアルファの体」という授業を受けた。 昼ごはんを一緒に食べようと、食堂で待ち合わせていた光に泣きついた。 「ひかるー。怖かった。 俺はあんなこと、できない」 「あの授業はみんな1年生のときに受けたんだよ。 木嶋先生は優しく教えてくれたんだと思うけど。 みきがウブすぎなんだよ」 近くにいた3人のクラスメイトが、集まってくる。 「授業で何が怖かったの?」 「葉山って、セックスしたことないの?」 「八重樫凪を持ち帰ったんじゃないの?」 質問責めにあう。 「やめろ、みきが怯えてるだろ」 光が庇ってくれた。 「葉山って、クールで喋らないじゃないの?」 俺はそういう印象だったのか。 「みきは人見知りなんだよ。 お前らみたいに喋れないんだよ。 聞きたいことがあるなら、ゆっくり一人ずつ聞け」 光が仕切っている。 俺は本当に困ってたから、ありがたい。 Ωはコミュニケーション能力が高い人が多いから、俺みたいなのは珍しい。 「無理やりされた後はどうしたらいいかとか、妊娠のこととか、、、怖かった」 「俺は経験ない」 「凪とは何もしてない」 何とか答えるが、顔が熱い。 「発情期のときはどうしてるの?」 「一人で、、、」 「八重樫とやればいいじゃん」 「そう言えば初めてのとき、、、」とみんな自分の初体験を話し出した。 それから凪の話にもなる。 抱かれたい、押し倒したい、、、それから、、、 Ωの間では性の話はよくするみたいだけど、俺は聞いていられない。 「パーティーの日、寮の前で葉山と八重樫が抱き合ってたって聞いたから、八重樫がとうとう落ちたって思ってた。 八重樫、すごいモテてだけど、誰も付き合うところまで行けなかったみたいだから」 「葉山、顔真っ赤だな。可愛い」 「みきの可愛いさは俺だけのものだ。 見るんじゃない」 「保護者だなー」 クラスメイトの誤解は解けたみたいたが、からかわれたら、たまらない。 「優希さんのイベントのとき、一人で話しに行ってたな。 俺も優希さん好きだけど、あの雰囲気で話しに行けるなんてすごいな」 「俺、どうしても言いたいことがあったから」 「葉山って、どうしてあんなにパーティーや授業から逃げてたの?」 「それは、、、」 「その質問は今は答えられないみたいだから、やめてやってくれ」 光がまた庇ってくれた。 ごめん。その答えは光にも話せてない。 クラスメイトと話すのは思っていたより、楽しかった。 最後に俺の夏休みの話になり、補習の多さに大笑いされた。 生活科の授業は思っていた程嫌じゃなかったし、これからは、みんなと一緒に授業を受けるのもいいかもしれない。 でもティーパーティーにはもう行かない。 俺にはαとの出会いは必要ない。 それに凪を見て自分が何を思うのかを知るのが怖かった。
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