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side 凪②
兄昴とパートナーの優希さんは同じ年。
中等学園時代に出会って、卒業後もラブラブである。
兄は180センチを超えた長身で、一流大学の4年生だ。
しばらく他の会社で修行した後、父の会社を継ぐ気らしい。
優希さんは長めの黒髪が魅力的な中性的な美人。見た目は穏やかだが、内面は結構男らしい。
兄を始めうちの家族は優希さんに逆らえない。
優希さん曰く兄は「ほぼストーカー」だったそうだ。
中等学園3年生4月のティーパーティーで出会って、毎月のパーティー中ほぼ優希さんを狙って周りをうろうろしてたらしい。贈り物攻撃も凄かったみたいだ。
優希さんを狙うαも多かっただろうから、無理もない。
優希さんの前のデレデレの兄を知らない人は「あの冷徹な八重樫昴が?」と思うだろう。
優希さんと弟の扱いの違いに俺も理不尽さを感じてる。
例えるなら、軽傷の優希さんと重症の俺が倒れていたら迷わず優希さんを助けるだろう。
優希さんは18歳でうちに来た。
オメガ中等学園では、3年生以上でパートナーが見つかった場合、早期卒業してαの家に同居するΩが多い。
嫉妬深いαが手元に置きたがるせいでもある。
αの実家は裕福な家がほとんどで、
Ωが同居することも歓迎される。
αとΩのカップルからはαが産まれることが多く、Ωは数が少ないから
αの両親も少しでも早くΩを引き取りたいだろう。
ようやく手に入れた大切なパートナー。
来年4月になったら、番契約をすることにしているそうだ。
本当は18歳から番契約はできるのだが、優希さんが「社会人になってから」という意向らしい。
一生のことだからお互い慎重にということだろう。
優希さん自身は18歳で絵本作家としてデビューして、人口の大部分を占めるβ向けが多かった絵本の世界に、αやΩのことを扱った作品を発表して注目されている。
うちは両親と俺がαだから、兄は俺たちとも2人切りにできないと思っているようだ。
信用がないが、俺に関しては優希さんに対しては兄には言えない気持ちを抱えているから心配しすぎとも言えないな。
母もαだが、「学生時代に優希ちゃんに会ってたら強引に口説いたわね」と言っていた。
優希さんに相談があると言ったら、当然兄も同席している。
俺は、天使こと「みきちゃん」との出会いについて語り、「みきちゃん」について調べて欲しいと頼んだ。
優希さんは、美しい顔を少し曇らせた。
「来週、卒業後のことの相談会があって卒業生が招待されているから、みきちゃんと話せたら話してくるけど、期待しないで。
そこまでの子なら何か事情がありそうだし、その子のためにならないと思ったら、むしろ凪ちゃんを引き離すから」
優希さんは毅然としている。
こんな男らしいところも兄を夢中にさせている一面だろう。
「懲戒で厨房で働かされているのかもね。
面白い子だな。会うのが楽しみ!」
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