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4.優希さん
2人の番自慢卒業生の後、優希さんの話が始まった。
優希さんはこの学園に5年生の卒業式までいたそうだ。
卒業の日まで残っていたのは、200人いた同級生のうち優希さんを含めて10人。その10人の中には、木嶋先生もいるそうだ。
司会の木嶋先生の「最後に伝えたいこと」という質問に優希さんはこう答えた。
「同級生が焦るように卒業していくのが辛かった。
5年生が終わるまでにパートナーとなるαを見つけられず、
実家に戻るのも歓迎されなければ、
自分の力で生きて行かなくてはならないって、不安になるのはわかる。
Ωがいきづらい社会だって俺も思ってる。
αと番うだけで幸せになれる訳じゃない。
自分の人生は自分で選んで欲しい」
優希さんの話は学園の教育を真っ向否定する内容だった。
学園長の周辺がざわつく。
生徒達は静まり返っている。
「αの子を育てるのも大切な仕事だから、番うことを否定はしない。
でもΩだからって決めつけず、自分の人生を自分で決めて欲しいって思う。
でも、俺も偉そうなことは言えないな。
卒業後はαの家で養ってもらってるし、絵本作家になれたのも運が良かったからってわかってる。
みんなには学園にいる間に自分を大切にできる生き方を考えてほしい」
木嶋先生が優希さんを見て、
軽く親指をあげた。
ありがとう!
そう言っているようだ。
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