からかさ

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からかさ

僕は、歩くのがちょっと苦手だ。 何かにつかまったり、支えてもらったり。 ゆっくりゆっくり歩いていく。 でも、雨が降ると、もうちょっとだけ大変になる。 だから僕は、傘を待つ。 「おはようございます」 ドアの外から声がした。 開けると、大雨。 そして、傘。 「おはよう。今日も雨だね」 「梅雨ですからね」 お決まりの挨拶をして、僕は傘につかまり立ち上がる。 ランドセルを背負い直し、もう片方の手には手提げを持つ。 よし、出発進行。 「行ってきます」 キッチンに向かって声をかけた。 いってらっしゃい。 ママが慌てて追いかけてくるけど、僕は待たずに外に出る。 バタン。ドアが閉まる。 「いいんですか?」 「いいの、いいの」 笑いながら、学校に向かう。 「おはよう」 「おはよう」 友達が追いかけてきた。出された手に、手提げを託す。 右手に傘、左手に僕の手提げをさげた友達は、並んで歩きながら僕の傘を見上げる。 「いいなあ、それ」 「いいだろう」 学校に着いた。 ありがとう。また帰りね。僕は傘に向かって手を振る。 では、また帰りに。傘は僕を見てそう言う。 そして、どこかに帰っていった。 ぴょんぴょんと、1本足で軽やかに。 濡れているのも気にせずに。 「当たり前だよね、傘なんだから」 僕は友達と笑い合う。 僕のともだち、からかさ小僧は、1本足の傘のおばけだ。 彼の足につかまると、僕の足取りも軽くなる。 だから僕は、雨の日が好きだ。
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