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「中学では卓球部、高校では水泳部か」
「は、はあ……」
(やめろ、やめてくれ。自分で記憶を封印している黒歴史があるかもしれない……!)
「空手はずっと習っていたのか」
「はあ」
「勉強はあまり得意ではなかった」
「……はあ」
「アニメの二次創作というのは面白いのか?」
「いっ……」
(いやあああああああ!!)
それまで、無表情ながらも不躾なほど興味津々といった様子でじっと己を見ていた明智梨果が、無表情のまま「ぶっ」と小さく噴き出すのを視界の隅に捉えた。穴があったら入りたい。なんならあの段ボール箱の中でもいい。
短く刈り込んだ頭から滝のような汗がとめどなく滴り落ちる。志馬は目の前が真っ暗になるのを感じた。
なぜだ。
なぜ大事な初日からこんな思いをしなければならないのだ。
──まあ、頑張れ。
巡査部長の言葉が怪しげな呪文のように頭の中で谺する。無理です頑張れません。体力には自信がありますが、自分メンタルそこまで強くありません。
「オーラが見えるというのは、いわゆる中二病というヤツではないんだろう?」
「……キャアアアアアッ!」
顔も耳も、額まで真っ赤に染めて、さながら世界的な名画のように、両手で頬を包んで絶叫した。誰だ、そんなことをバラしたヤツは。出てこい、今すぐ八つ裂きの刑にしてやる。
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