Episode 1

10/21
622人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ
 だが、画面をスクロールする久我の指がふと止まった。 「なるほど、青緑色か」 「はい……」 「青緑色のオーラの人は、知的で優しく冷静沈着、クールな癒し系……」 「……あの」 「なんだ?」 「オーラの色の意味を、ネットで調べてるんですか?」 「さ、彼と話してこよう」  そそくさと携帯をしまうと、久我は大股で歩きだした。一瞬遅れた志馬が慌てて追う。 「あのっ、久我係長、あの男性は、何者なんですか?」 「私のことは“班長”でいい」 「は、班長」 「信号が変わったぞ」  人々が一斉に動き出す。さまざまな色が混ざり合う。  もしあの男が全国指名手配中の容疑者だったら。いや、だがあの男からは、どす黒いオーラは見えなかった。  では一体──  静かなざわめきが波となって押し寄せてくる。不思議な事に、青緑色のオーラを持ったその男は、あれだけ大勢の人のなかにいても、一人だけひどく目立っていた。オーラのせいではない。人の目を惹き付ける何かがある。  男との距離が縮まる。男はまだこちらに気付いていない様子で、颯爽と歩いている。気付いたらどんな行動に出るだろう──慌てて逃げるだろうか。志馬は無意識に、いつでも全力疾走できるよう全身の筋肉を張りつめた。  男まで15メートル……  10メートル……  ふと男と目が合った。まるで吸血鬼のような白い肌と、大きな漆黒の目。  その目が僅かに見開かれた。
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!