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そもそも志馬は、オーラが見える警察官を探していた久我によって、この第5係、通称「久我班」に配属されたのだ。久我がどんな手を使って志馬の隠された情報を知り得たのかは謎だが、少なくとも久我は、志馬の能力を全面的に信用している。
だが椎野は、志馬を嘲笑うかのように片方の口角を上げた。
「あいにく俺は、証明のしようがないものを信じろと言われて、それを素直に信じられるような年齢じゃねえんだ」
「……だったらなんでアンタは久我班にいるんだよ?」
「異動になったからだが?」
ああ、なる──いや、そうじゃない。
「つまりアンタは、自分の上司をまったく信用してねえって事なんだな?」
「俺はおまえを信用できねえって話だ」
「それはな、要するに久我班長の事も信用してねえって事に繋がるんだよ。そんなことも解んねえのかよ?」
「へえ。どこがどう繋がるって?」
「班長の目的は、オーラを読み解く事で犯罪予備軍を炙り出し、犯罪を未然に防ぐ事……その為に俺はこの班に呼ばれたんだ!」
熱弁しながら「あれ?」と思った。
これまで志馬は、オーラが見える事を隠して生きてきた。人と違うのはいけない事だから。だが、どんなに仲良くなった相手であっても、打ち明けられない秘密があるというのは、心苦しいというか、あと一歩相手に踏み込めない、受け入れられない壁のようなものを作ってしまう。志馬は常に、言いようのない疎外感をぬぐえずにいた。
しかし、久我は違う。最初からオーラ目的で志馬に近付いてきた。明智にしても、オーラを科学的に解明しようと躍起になっている。ここは、久我班は、自分にとって初めて、壁を必要としない居場所なのではないだろうか。
ふと気付くと、椎野が静かな眼差しで自分を見つめていた。先ほどの嘲笑は跡形もなく消えている。
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