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(生きてるのにオーラがない人なんているのか? それとも、オーラが透明とか?)
「どうした、志馬君?」
久我の声にはっと我に返った。気になるが、だからといって「オーラがないから職質させろ」という訳にはいかない。戻ったら明智にでも聞いてみよう。それで答えが出なかったらネットで検索してみる。
3人は駅前のスクランブル交差点を渡り、港那伽署へと足早に向かった。
***
久我を先頭に署内を歩いていると、あちこちから「久我班だ」というヒソヒソ声が聞こえてくる。冷ややかな眼差し付きだ。そうした声や目を久我がまったく気にしないのは解るが、椎野さえ動じる様子がない。
(そのうち俺も班長たちみたく、まわりの目が気にならなくなるんだろうか……)
それがいい事なのか悪い事なのか、既に志馬は判断できなくなっていた。
エスカレーターで4階に上がり、トイレ脇の、半分倉庫のような第5係の部屋のドアを開ける。
薄暗い室内に目を凝らすと、明智が俯き加減でぼうっと佇んでいた。ぼさぼさの髪に青白い顔……不覚にも志馬の背筋を悪寒が駆け上がり、ぶるりと身を震わせた。
「ん、どうした志馬君、寒いのか?」
「あ、いえ……」
「久我班だ」という声と同様、明智の不気味な存在感にも慣れるものなのだろうか……。
恐怖の宿る志馬の視線の先で、明智がゆらりとホワイトボードに近付いていった。
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