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「すごい! お姉さん、オーラ見えるんだ!」
「いいや、残念ながら私は見えない。けどね、オーラは絶対にあるって信じてる。それを証明したくて、今も研究を続けているんだ」
「あの、俺、見えるよ……?」
「研究? 研究って、大学で?」
「大学は卒業して放り出されちゃったからね。本当は残っていたかったんだけど」
「俺、オーラ見える……」
「お姉さんがオーラを証明できたら、幽霊の存在も証明できるかもしれないね!」
「あははっ! 私は幽霊は信じてないけど、いたらどんなだろうね。もし幽霊に会ったら、あの世の事を聞いてみたいなあ」
「あのー、もしもし? 俺──」
突如、明智が少年の手を両手で握り締めた。
「君が大きくなったら、是非とも私の研究を手伝ってくれ!」
えっ。なんだそれ。勧誘?
「いいの!?」
「勿論だとも!」
いいのか少年よ!? ていうか、ついさっきまで死ぬほど悩んでいたんじゃなかったのか!? おまえの切り替えの早さは金メダル級だな!
唖然とする志馬の前で、二人は固い握手を交わしている。少年の灰色のオーラはすっかり影を潜め、今や淡い黄色のオーラに包まれている。
恐らく彼は、このオーラが示すように、本来はとても明るく、朗らかな子どもなのだろう。少年の為とはいえ、彼の良さを圧し殺してしまう両親の「愛」は、幼い彼には重すぎた。
「お姉さん、お姉さんの研究を手伝うには、どうしたらいいの?」
手を握られたままの少年が、キラキラと目を輝かせている。志馬は呆れると同時にほっとした。
「いろいろ学ぶ必要があるぞ。脳科学、脳神経学、心理学……」
「大学に行けばいいの?」
「そうだな。大学は学ぶのに最適な環境だ」
少年は真剣な表情で、じっと明智を見つめた。そこに迷いはなく、何かを決心したかのような強い眼差しだった。
「僕、頑張るよ」
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