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志馬とともに第5係室に戻ると、椎野が明智の机に座っていた。その姿を認めた久我の顔がぱあっと輝く。
「椎野君! 実はさっき──」
「ネットストーキングだろ? 明智が詳細にメモしてくれてる」
椎野がPCの画面をスクロールすると、まるでシナリオのように、発言者の名前とその発言内容がずらずらと表示されていく。話が途切れた箇所には、志馬の表情まで書き込まれていた。
「“鬼瓦のような顔”って、志馬、おまえはもともと鬼瓦みてえな顔をしてるが」
「はあ? なんか言ったか、くたびれた吸血鬼」
「鬼瓦だの吸血鬼だの、ろくな班じゃねぇな」
「あ、ひどい」
久我がつーんと口を尖らせる。190センチちかい、がたいのいい29歳の七三分けの男がそういう表情をしたって不気味なだけだ、と二人の鬼が冷ややかな眼差しを向ける。
「話を戻してもいいかな、鬼瓦君、吸血鬼君」
「なんだ七三」
「被害者の山崎翔子さんは、古井戸君が実家に送っている」
「その呼び方やめろ」
「山崎さんの携帯を預かった。相手はこの携帯にかけてきた」
久我が示す、およそ久我に似つかわしくないパステルピンクのケースに入った携帯を、椎野は首を傾げて見つめた。
「実際に本人を監視してるとして、携帯が他のとこにあるって事までは、さすがに判んねぇだろうな」
「ああ。何時になってもマンションに帰ってこないとなると、再度かけてくる可能性は非常に高い」
「いや、絶対かけてくるだろ」
「椎野君」
「ストーカーしてる相手の携帯に男が出たら、間違いなく刃傷沙汰になるな」
「椎野君、これ、預かっといてくれるよね?」
「もしかしたらゴリラみてぇな大男かもしれない。そんなの相手に取っ組み合いとか、冗談じゃねえ」
「預かってくれるよね?」
「──ちっ」
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