Episode 4

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 志馬は反射的に腰を落とし、左の脇の下に収めた銃へと手を伸ばした。  呼吸が浅くなり、心臓は不快なほど強く拍動する。  落ち着け──警察官は全部で6人、椎野を入れれば7人いる。椎野にしても、恐ろしいほどの馬鹿力と人間離れした瞬発力は、社会人ニート坂下圭吾の一件のときに明らかとなっている。  だから、大丈夫だ、まわりは屈強なヤツらで固めてある。そもそも椎野自身が屈強だ。万一、相手が仲間を引き連れてきたとしても──  ………仲間?  志馬ははっとなって僅かに目を見開いた。 「おい」  マイクを口に近付け、低く囁く。 「傘を持った男ってのは、一人か?」 『一人です』 「その男の周囲に不審なヤツはいないか?」  僅かに返答が遅れた。 『……カップルが数組と、大学生くらいの4、5人のグループがいますが』 『志馬君。ちょっと落ち着いて』  久我の声だ。志馬は口を噤んだ。 『向こうだって、こっちが張り込んでることくらい予想してるよ。堂々と仲間を連れて来るとは思えないなあ』 「だったらもっと周囲を警戒すべき──」 『視界に椎野さんを捉えました』  傘を、まるでライフルのように肩に担いだ(いか)つい男が、ゆっくりと椎野に近付いていくのが見えた。志馬は舌打ちした。  その巨躯のためか、あるいは大型肉食獣のような歩き方のせいか、男は異様な雰囲気を醸していた。オーラの色は、赤、そしてオレンジ──ただしどちらも、まるで炎のように猛々しい。志馬はそっと鼻から息を吸い込んだ。
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