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「志馬です。ヤツのオーラは、暗い色合いの赤とオレンジ」
『赤とオレンジ? どんな意味があったかなあ。ちょっと待って、Goggle先生で調べてみ──』
「本来の意味は解りませんが、とにかくヤツはアドレナリン出しまくりの、一種の興奮状態にあるとみていい。油断するな!」
志馬は一方的に通話を切ると、ヘッドセットをポケットに捩じ込んだ。
男と椎野の距離が狭まる。既に椎野も男に気付き、じっと目を向けている。
身長は2メートルちかく、肩も胸も筋肉で盛り上がっている。がっしりとした顎を僅かに上げて、ただでさえ身長差があるというのに、にやにやと厭らしい笑みを浮かべて椎野を見おろしている。
苛立ちとともに、だが椎野は違和感を覚えた。
本当にコイツがあのストーカー男と同一人物なのだろうか。甘えるような、気味の悪いしゃべり方の?
距離が縮まる。
15メートル──
10メートル──
椎野は左の爪先をそっと男のほうへ向けた。
その時だった。
「うおりゃあっ!」
派手な掛け声とともに志馬が花壇を飛び越え、男の目の前に躍り出た。同時に他の2方向からも4人の警察官が姿を現す。
あっという間に男は取り囲まれた。足を止め、いつでも飛び掛かってきそうな勢いの警察官一人ひとりを、不思議そうにゆっくりと見回す。
「……なに?」
ねばつくような男の声に、志馬はぶるりと身を震わせた。
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