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4、出版記念
白野 楽 『愛するあなた』出版記念
○○書房
ホテルの会場の入り口には、白地に墨で書かれた案内が立てられていた。主役のおじさんは当然先に来て、中にいる。
渉は仕事が少し長引き、今日は遅れてしまった。おじさんはしびれを切らせているに違いない。
シンプルな白地に細いストライプのシャツを着、紺の夏のスーツを着た渉は、慌てていた。中ではなにか、あいさつが始まろうとしているようだ。
と、会場に駆け込んだところで、目の前に飛び出してきた人とぶつかりそうになった。小柄な若い女性である。
「すみません」
女性は軽く振り向いて、謝った。手にはカメラ。いでたちからして、その業界の関係者の人間らしい。
ふつうなら、「大丈夫ですか」などといいながら、それきり別れて済むはずのところだった。しかし……。
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