第死食・―最後の晩餐―

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 そんな生活をなんびゃくねん、なんぜんねんと続けた結果、あくまは料理人として最高の腕をふるえるようになった。  料理の度に赤く染まる厨房。自分の身体を使って、提供され続ける至高の料理の数々。  全ては男を満足させるため。男に喜んでもらい、最高の食材を手に入れるためであった。  ――嗚呼美味い。  その一言があくまを駆り立てる。  もっと良い料理を、もっと良い食材を、もっと腕を磨き、更に修行を重ね。だが、肝心の目的は忘れていない。  そうしていつしか、男には、この世で口にしたモノがないと豪語出来る程、何でも食べてしまっていた。  その、矢先であった。  遂に約束――契約が果たされる時がきたのだ。  あくまは身震いする。  ようやく手に入る。  “命”を食べる。  男を支配する。  料理をする。  食べたい。  食べる。  早く。  は。  ……。  あくまは、食べる。  “命”を。  ようやく。
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