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第死食・―最後の晩餐―
あるところに、とても大きな屋敷に独り棲む男がいた。
男は独り。ずっと独り。
いくら趣味を極めても、美味いものを食べても、独りには変わりなく、共有出来る召し使いすらいなかった。
だから男は禁忌の術に手を出した。
あくまを召還し、言ったのだ。
――傍にいてくれ。
あくまは……と言った。
すると、男がにやりと笑う。
――私は美食家。この世のありとあらゆるものをくれ。そうしたら私が君に、最高の食材を提供しよう。
かくして男は、あくまを召し使いにした。
その日からの生活は一変する。
ずっと独りだった男の傍には、ありとあらゆる願望が揃った。
あくまに要求し、再生する身体を使って食材を調達してくる。
食べる。
また料理する。
そんな繰り返しが、何年も、何十年も続いた。
飽きる事なく。絶える事なく。尽きる事もなく。連綿と続いた。
あくまは待った。
いつの日か、最高の食材を提供してもらえるその日まで、男に仕え続けた。
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