マグナマテルの傘

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マグナマテルの傘

改札を抜けた小さな駅の階段で、立ち尽くした。私は今、本降りになった雨に困惑している。 傘はある。 ジジイの小言を聞くくらいなら、言われた通り持って出かける方がマシだ。 でも傘をささないのには理由があった。 古びた黒いコウモリ傘だから? 違う。真っ黒な傘で雨を凌ぐのと、ほーら俺の言うことを聞いていれば間違いないだろうと覆い被さってくるのとが、区別できてないのだ。要はどちらも気に入らない。 ちゃっかり電車に置き忘れてこようかとすら思っていた傘は、忘れよう忘れようと変に意識したら、むしろ手放し方を忘れてしまった。 そうだった。大抵、意図したことは叶わない。 □
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