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西口のひさしの下で雨宿りをしていると、さっきから私を追い越す人たちが、
ポン、ポン、ポン、
次々と傘を開き、タンポポの綿毛のように散っていく。
色とりどりの傘に出遅れたもう一人、いつから居たのか笛吹も立ち尽くしていた。
中学から知っている、気のいい後輩。でもここ数年はすれ違っても視界に入れないことにしている。笛吹め、早く帰ればいいのに。
そう念じてどのくらい時間が経ったろう。周囲は二人の他に誰も見当たらない。
笛吹、どうかしたんだろうか。
気を回せば答えはすぐに見つかった。
ああそうか。笛吹は正真正銘傘を持っていないのだ。
だったらお互い運がいいじゃないか。無言で笛吹にコウモリ傘を押し付けた私は、どしゃ降りの中を逃げるように走って帰った。
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