助手席は君のもの

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「おはようございます」 「んあ。おはよ」 「黒いセダンが見えたから、きっと海藤さんだなって。またタバコですか?」  コンビニから出てくる井上と一緒になった。 「ああ。井上は昼飯?」 「はい。新発売のチョコミントのムースが美味しそうで、一緒に買っちゃいました」  そう言ってビニール袋を掲げる。俺は車のキーを振りながら返した。 「タバコ臭くて良ければ、会社まで送ってくけど?」  しかし井上は首を横に振る。 「臭いのは嫌ですよ。どうせ会社でも殆ど吸えないんですから禁煙すれば良いじゃないですか」 「分かってねぇな。俺には癒やしが必要なんだよ」 「タバコで癒やされるなんて寂しいなぁ」 「仕方無ぇだろ、他に無ぇんだから」  彼女はふふふと笑った。そして「それよりも……」と声を落とす。 「?」  俺は腰に手をやり井上を見た。髪の毛を一つに縛り、紺色のパンツスーツにピンヒールを履いたキャリアウーマン()の姿は、一生懸命背伸びをしているようで尻がムズムズする。似合ってないとは言わないがもっと年相応の格好があるだろうに。  その井上は人差し指を突き立て、ニヤリとアヒル口を作った。
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