助手席は君のもの

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「簡単に女の子乗せちゃ駄目ですよ」 「何でだよ?」 「大事な助手席は本命の彼女用に取っておくのが当たり前じゃないですか。一緒にディズニーに行ってくれるような彼女用です」  俺は片眉を吊り上げた。 「だから余計なお世話だっつーの」 「可愛い後輩からの忠告です」 「自分のこと可愛いとか言ってんじゃねぇよ」 「へへへ。良いじゃないですか、事実なんですから。ではまた会社で」  井上はしれっとそんなことを言って歩き出した。 「ったく……」  俺は後頭部を掻きながら、カツカツとヒールを鳴らす背中を見送る。頭の後ろで纏めた長い髪が揺れていた。
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