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律の挙式を見て、涙ぐみながら出て来た。
すぐに奏に捕まる。
頬を潰されて、久し振りの洗礼を受けた。
自分のスマホを渡されて、手にすると懐かしさを感じた。
連絡すると約束して、奏と別れてマリーとの待ち合わせ場所に向かう。
マリーが見えた所で手を振ると、後ろから腕を捕まれた。
今度は颯だった。
話しをする事になり、お手洗いで会った彼女も一緒なのか気になりながら、
邪魔が入らずに話が出来る場所、という言葉に、颯は自分が取っている部屋を提案した。
普通なら躊躇する所だが、おそらくは彼女もそこにはいなくて、話しをするにはいいと思えた。
昔から一緒にいて、颯が私に乱暴をする事も、手を出す事も一度もない。
高校卒業のお祝いにキスをねだった私に対して、おでこで誤魔化した人だ。
(決められた許嫁に、手は出さない。)
この世で皮肉にも一番安全な人。
少し話しをして、颯が会社を白蕗から高原に戻った事、支社を廻っている事を聞いた。
だから、あの場所に来たのかな?なんて考えてたら、彼女の話しを始めた。
聞きたくない、事だった。
颯の楽しそうな顔が浮かぶ。
私には見せない顔、そう言って怒りたくなる。
(このままじゃ怒りそう……。)
冷蔵庫に行って何でもいいからお酒を出した。
案の定、颯の中では私は子供みたいだ。
「飲めるの?」
なんて聞かれる。
二人でビールを飲み、話をする。
昔の事をほじくり返して話していたら、段々、腹が立って来てワインを開けた。
ちょっと懲らしめたくて、マリーに前日に相談して、受け取っていた小さなテキーラの小瓶を隠して開けた。
颯に、
「上着シワにならない?」
と、言い、片付けてる間にテキーラを数滴、ワインに入れた。
そこで話を最初に戻し、核心に触れた。
そういう仲じゃないと、颯は言った。
嘘にもほどがある。
「バレンタインデーに寝たよね?」
今まで言えなかった事をやっと言えた。
颯は素直に認めたけど、彼女とは別れた、と言おうとした。
その瞬間、頭の中に彼女の嬉しそうな鏡に映った顔が浮かんだ。
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