音の過去

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マリーに付き添われて、クラブ、ローズムーンで面接を受けた。 大きな店ではないけど女の子も20人はいて、この街の会社接待とかにも使われる店で、ママは迫力美人だった。 次の日から来てと言われて、マリーと別れて一人で帰った。 翌日、朝食を食べ終えるとマリーが、 「あとで買い物行くよ?」 と言い、連れて行かれたのがドレスの並ぶお店だった。 「え?ここ…。」 「貸してくれるって言うけど、音は背も低めだし、短すぎるミニスカートだと困るでしょ?プレゼントする。その代わり選ばせてくれる?私、好きなのよねぇ。自分のは売ってなくてね、サイズが…。いつも既成品の大きいサイズを手直しするの。」 とマリーは言い、楽しそうにドレスを選ぶ。 「そうねぇ…色もデザインもこれが1番ね。でも裾が少しひらひらし過ぎね。 座ったら膝まで出ちゃうし、危ないわ。これにして下を縫ってあげる。」 そのドレスは裾の部分が、膝上あたりから一枚の花びらをくっ付けた様なデザインで、スリットが細かく入っている様なもので、座ると確かに膝上まで見えてしまいそうだった。 マリーはそれを買い、家に帰ると縫い合わせてくれた。 脚のシルエットは出てしまうけど、ピシッとするから捲れる事はない。 「うん!似合う。満足だわ、良い出来。」 出来上がったドレスを見て、嬉しそうにマリーは笑う。 「マリー……ありがとう。」 感謝しても、しても、仕切れない。 泣きそうになった。 「バカね、何で泣くのよ。しっかり稼いでおいでね?音、服も数枚しかないでしょ?化粧品も基礎と、ファンデ、口紅のみ。いずれは揃えるのよ?お姉さん達を見てね?自分で稼いで買うのよ?」 「はい!頑張ります。」 その夜からマリーと一緒に家を出て、仕事に出掛けた。 初出勤だけど、マリーがいる気がして怖くなかった。 緊張はしたけど…周りの人も親切だった。 クラブ ローズムーン…ヘルプ、マリーが誕生した。
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