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「放して下さい。急いでるんです!」
「急いでるって、キョロキョロしてたでしょ?この辺の子じゃないでしょ?」
右側の男性が言う。
「こんな可愛い子いたらさ、俺ら絶対見落とさないもんな?」
左の男性も言い、鞄に手を掛けた。
跳ね除けて、鞄が肩から落ちた。
取りに行こうとすると手を引張られる。
「ちょ…やめて!鞄…。」
鞄に手を伸ばす。
もう、今の自分の全てはあの鞄と、斜めに欠けているセカンドバックしかない。
「遊んでくれたら、取ってあげる。」
にやにやとした顔が目の前で笑うと、憎らしくなり睨みつける。
口笛を吹き、強気ーぃと、楽しそうに笑う。
「こんな田舎に観光?泊まるとこあるの?案内するし、家においでよ?
ただで泊めてあげるし。」
捕まれた腕は男の腕の中に引き寄せられる。
抵抗すればするほど、楽しそうに笑う二人の男。
「うわっ!近くで見るとマジ可愛い。肌白いね?透き通るみたいじゃん。
大丈夫、俺ら優しいよ?」
(駅前を少し離れただけなのに、何で誰もいないの?)
叫ぼうにも人通りがない。
そんな田舎に来たつもりはなかった。
もちろん新幹線に乗り、新幹線が停まる駅では捜されやすいかもと考えて、ローカル電車に乗り換えて、いい感じだと思う駅名で適当に降りた。
それでも新幹線が停まる駅からそれほど離れてはいないはずだ。
何処までもついてないのか……。
そう思った時、二人組の男性の後ろから声が聴こえた。
ハスキーだけど綺麗な声。
仲間が来たのかと思った。
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