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「元カノ、橋本 明美さん。あ、別れたのはさっきね?
話を聞いてから…腹黒過ぎて付き合えない。」
彼女の後から部屋に入り、ドアを閉めながら奏が言う。
橋本は目に涙を浮かべて、その場に座り込んだ。
奏は優しく両腕に手を添えて、彼女を反対側のソファに座らせた。
「話して。俺に話した事。協力してくれたら会社はそのまま。」
奏が言うと橋本は口を開いた。
「飯塚……円佳とは、高校生の時同じ学校でした。
営業補佐になり、高原に書類を届けに行き、受付にいた飯塚さんと再会しました。一年半くらい前です。
二度目に高原に行った時、二人でランチに行こうと言う話が出て、ロビーで円佳の昼休憩まで待っていたら、白石蕗のお嬢さんが…入って来ました。」
少し泣き声で、それでも淡々と橋本は話を続けた。
「受付に行き、円佳と会話していました。」
「すみません。白石蕗と申しますが、高原社長とお約束をしております。
取り次いで頂けますか?」
小さいけど、真っ白な肌。長い黒髪ストレート。
どこか品のある、柔らかい笑顔と物腰。
飯塚円佳は同性ながら息を飲んだ。
(綺麗だけど、可愛い方が強いかな?こんな美人いるんだ。)
神様は不公平と思いながら内線を入れた。
すぐに社長秘書が迎えに来た。
「ごめんなさい。お忙しいのに。場所さえ教えて頂いたら、一人でたどり着けますよ?」
笑顔で冗談ぽく言う。
「いえ、社長がお呼びになられたとか…ご案内致します。」
秘書がどんな会社の営業マンよりも丁寧に相手をする。
(誰?この女の子…何者?)
「よろしくお願いします。実は方向音痴で、迷い込んだらどうしようかと思ってました。」
その言葉に緊張していた秘書も少し笑う。
二人は笑顔を見せながら、エレベーターに向かった。
隣の先輩受付嬢に聞いた。
「ああ、今のお嬢さん?白石蕗って名乗ったじゃない。
取引先でうちより大きな白蕗コーポレーションのお嬢さん!
うちの次期社長の許嫁だって。狡いわよね?可愛くてお金持ちで。
まだ19だって。これから綺麗になるんでしょうね?」
飯塚円佳は入社した時から、ちらっと見かけた高原 颯をカッコいいと思っていた。
彼は別の会社に勉強として勤めていたし、ここには滅多に来ないから会えない。
それでも噂を聞き集めた。
噂の中にいた、お嬢さん、颯さんが小さな頃から大事にして可愛がっていると聞いていた。
それでも、颯は誰かと付き合ってはすぐに別れる。
付き合った女が気になり、探偵に探らせた。
全員に共通点を見つけた。
みんな、過去の女はあの女に、どこか似ていた。
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