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「何してんの?女の子相手に男が二人で…。嫌がってるんだから放してあげたら?」
背が高くて足も長くて、黄色のジーンズにオレンジ色のシャツ、薄い黒のロングカーディガンを羽織った、長めのショートカットの美人が立っていた。
「うわ…お姉さん、でかいね?」
二人組の男も振り返り、そちらに行く。
その間に鞄を取り、抱え込んだ。
「遊んであげましょうか?私、手荒だけどいい?黒帯程度だけど?」
「おい、よく見たらこいつ…。」
「行こうぜ。」
その女性が私の様にしつこくされるかと思い心配していたが、二人組は意外に呆気なくどこかへ消えた。
座り込む私に、女性が手を伸ばした。
「平気?観光?この辺り見る物無いけど?」
手を取り立ち上がり、すぐにお礼を言った。
「ありがとうございました。助かりました。お姉さんも危ないと思って、すぐに警察に電話しようと考えたのですが……携帯が無くて…ごめんなさい。」
お姉さんは物珍しい顔で私を見た。
「私…お姉さんに見える?」
妙な質問だなぁと思う。
「見えます…けど。」
「どんな?」
「どんな?えっと、背が高くてモデルさんみたいで、服が派手?
でも似合ってて、すごく綺麗です。」
「なんていい子!」
ガバッと抱きしめられてしまった。
身長155センチの私が大きなお姉さんに潰される。
「あの、苦しい……。」
「ああ、ごめんね。嬉しい事を可愛い子が言うからついね?
お礼に何かお手伝いする事ある?」
「お礼は、私がする事で…。」
「いいのよ。嬉しい事を言ってくれた。嬉しい、ほんとよ?
どこに泊まるの?危ないから送っていくわ。」
「まだ…。あの、ネットカフェとかありませんか?」
「泊まる気?あなたが?」
驚いてお姉さんは大きな声になる。
「はい。」
「いくつ?もしかして家出?」
「家出と言えばそうなりますけど、ハタチは過ぎてますから、自立です。」
「じゃあ、ここで自立する気で?」
「出来れば…。取り敢えず泊まるとこ探して、仕事を探すつもりです。」
初対面の人に何を言っているのだろうと思うが、助けてくれた人だ。
お姉さんは少し考えてから、
「家に来る?部屋空いてるし。ああ、でも私、今から仕事なのね。そこに付き合ってもらって、手が空いたら家に案内する。私の仕事を見たら、家に来るのも嫌になるかもしれないし、お店で食事も食べられるから、奢るわ。どう?」
お姉さんが何を言っているかが少し、理解できないでいた。
それでもここに一人で置いていかれる事が怖いので、付いていく事にした。
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