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(男の人?女の人?どっち?逃げるべきなの? 助けてもらって食事も食べさせて頂いて、寝てる私を運んでもらっておいて、お礼も言わずに?)
うろうろしながら悩んだ。
「あんたって、本当に考えている事が手に取る様に分かる子ね?」
お姉さんが部屋の間の扉の所に立っていて驚いた。
「逃げようか悩んでたんでしょう?私怖い?」
首を振った。
「じゃあ、いて。せめて朝食くらい食べてから出て行きなさいよ。
運んで来たけど、鞄も開けてないし、あんたの身体にも何もしてないわ。
取り敢えずシャワー浴びて来る。朝食はその後、作るわね。」
「あ、あの。シャワーの間に作ります。予定はありますか?メニュー。」
「そうね、トーストとハムエッグ。冷蔵庫のキャベツでサラダ。
それでいいわ。任せるわね。」
「はい、分かりました。」
シャワーから出てきたら、テーブルの上を見て、何故か感激してくれた。
「お嬢様には無理だと思ったのに…。」
感激の意味が分かった。
二人で朝食を食べながら話をした。
「で?これからどこ行く気?」
「あ…。泊めて頂いてありがとうございました。運んでもらい、申し訳無く…。仕事と部屋を探します。少しはお金もありますので。
お姉さんには感謝でいっぱいです。」
箸を置いて、頭を下げた。
「なんだか危ない感じねぇ?働いた事あるの?」
「……いえ。」
「一人暮らしは?」
「初めてです…。」
お姉さんはため息を吐く。
「私の仕事、どうだった?」
「どう?綺麗でしたし、お話も面白くて、皆さん綺麗で素敵でした。」
「あんた…本当にいい子ね?私、男よ?」
「お姉さんですよね?どこからどう見ても…。」
シャワーの後は綺麗にヒゲを剃り、ロングの部屋着であろうニットのダボっとしたワンピースを着ていた。
男性がこんな可愛い部屋着は着ない。
「私ね?性同一性障害なの。知ってる?」
「テレビで見た事があると…。確か、心と身体の性が一致しない、病気?」
「うん。小さな頃から姉と遊んでて、大きくなると気持ち悪いって言われるの。私には綺麗なビーズや人形、可愛いぬいぐるみ、そっちが好きなのに、虫捕りとか野球とか連れ出される。高校を卒業してやっと心が自由になれた。
だからね?あなたがここに住んでも、私には同性のルームメイトなの。
心は女性だから、好きなのは男性だから。」
「あの…ここにいてもいいって事ですか?」
「あなたが良ければね?お姉さんって呼ばれて嬉しかった。
普通は、店まで連れて行けば態度が変わるのに、あなた変わらないんだもの。
女の子の友達、嬉しいわ。」
「バイト探します。落ち着いたらアパートも探します。しばらくの間、お願いします。」
必死に頭を下げた。
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