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「うん、私ね、…」
言いかけて、向こうの部屋からノートを持って来た。
「これ、初川 麻里 はつがわ…あさと。本名ね。店ではマリー。」
「ああ、マリー。なるほど…。」
感心した。
「あんたは?」
「あ、白石蕗 音、」
ペンを受け取り、ノートに名前を書いた。
「しらつわぶき、おと、です。よろしくお願いします。」
「私、25だけど、ハタチは過ぎてるって言ってたわよね?」
「3月に短大を卒業して、6月が誕生日です。もうすぐ21です。」
「取り敢えず、誘拐犯にはされなくて良さそうね?成人だもの。
よろしくね。もう一回寝るわ、一時頃起きるから好きにしてて?煩くても気にならないから。」
ベッドのある奥の部屋に行きかけて振り向く。
「あ、部屋、玄関の右、物置になってるの。
隅に片付けてまとめて、起きたらやるわ。布団位は敷けると思うから。
狭いから悪いけど、そのかわり家賃いらないから。
じゃあ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
(捨てる神あれば拾う神あり。)
そう思い、この出逢いに感謝した。
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