七夕の夢

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「なんだか、何から話したらいいのか…沢山あり過ぎて……先ずはごめんかな?音には嫌な思いを沢山させていたと思う。去年のクリスマス、マンションで会ったんだよね?飯塚 円佳さん。」 ピクッと、音の身体が反応した。 「両思い的な事を話したと思うけど、違うから…。確かに、あの頃何度か食事に行ったし、俺から誘ったけど、そういう仲じゃなかったし誤解だよ?」 音は立ち上がり、冷蔵庫を開けた。 「飲んでいい?」 片手にビール、片手にワインがある。 「い、いいけど……飲めるの?」 イメージがなくて思わず驚いて声にする。 「ふふっ、飲めるの?って…ハタチ過ぎてるんだけどな?もう21ですよ? それにお店ではこれでも売れっ子ですし?」 優しい表情で可愛く笑い、悪戯っぽく俺を見る。 (それは分かる。こんな子がいるお店なら俺でも通う。) 「まずはビールかな?半分個ね?飲まないと話せない気もするし…。」 と言い、コップに缶ビールを半分ずつ注いだ。 飲みながら、続きをどうぞと言う。 「え?えっと、だから、彼女の事は誤解で…俺が好きなのは今でも音だけ。」 「食事に何度も誘って、許嫁とは食事に行く暇も式の打合せする暇もなくて?」 「それは……悪かったと思ってる。」 (そこを責められると、説明が難しい。まさか、音を襲いそうだから会わないようにしていたとは言えない。) 「ずっと奏ちゃんも一緒で、二人で遊びに行くとかもなかったしね。 私たちは幼馴染のままで、颯には私はいつまでも子供で、高校生の颯の最初の彼女も、その後の彼女も、私は何も言わなかったでしょ?」 「えっ?知ってたの?」 (女ってこえぇぇ…。) と思いながら、あの頃の音を思い出す。 (変化は何もなかった……それは、俺の事を好きではなかったという事なのだろうか…。) くすくす笑いながら、安いワインを開ける。 小さな一人で飲める位のペットボトルのワインだ。 それをコップに注ぐ。 「奏ちゃんはああ見えてバレバレだし、ダブルデートとかしてたでしょ?」 くすくす笑いながら、俺がさっき脱いだ上着とネクタイを見た。 「それ…シワにならない?掛けようか?」 「あ、いいよ。自分でやる。うん、大丈夫。」 ベッドの上を四つん這いで歩いて、上着を掛けに行った。 戻って来て座ると乾杯、と言われて、ワインを飲んだ。
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