音の…願い

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言っていいのか駄目なのか分からないけど、気が付けば口から出ていた。 「彼女、妊娠してるって!」 颯は絶句していたから、知らなかったのかもしれないし、私が知らないと思っていたのかもしれない。 後者なら最低な男になる。 それでも私だけを見てきて、私だけが好きだという颯に、我慢が出来ずに大きな声を出した。 女性なら素直な感情だ。 「そういう人なら!それが本当なら!他の人に子供なんか出来ないよ!」 耐えられずに思わず叫んだ。 耐えられない事の中に、彼女の妊娠を知り、彼女の名前を呼んだからという理由もあった。 「なんで円佳がここに……。」 明らかな彼女呼び。 円佳…その言葉が颯から出ると腹が立って仕方がなかった。 だからもう、決定的な言葉を言う。 「円佳……円佳さんと寝て、お付き合いして、許嫁とは破談にする。 そう言った。それは事実でしょう?」 颯はそれを素直に認めた。 (真面目な人…。何で、そんな所で真面目なの?) 自分が馬鹿なせいだと言いながら、少し頭が揺れ始める。 テキーラかな?と思ってベッドに横になる様に言う。 動き出す颯を見ながら思う。 (昔も似たような事あった。) 小さな頃から一緒にいて、夏休みもほとんど一緒で、小学校四年から高校卒業まで家庭教師もしてくれて、ずっと、ずっと…いつかは颯のお嫁さんになるんだと思ってた。 (あの人のお腹に颯の子がいる。) ずっと一緒だった私が、手に入れられない颯を、彼女は振り向かせた。 (お嫁さんになる夢がもう無理なら、せめてひとつくらい、いいでしょう?) 「何を話しても、もう何も変わらない…。」 正気なら、颯は何もしなかったと思う。 テキーラで酔った颯に初めてキスをした。 指先が震えて、唇も震えた。 (気付かずにいて……。) そんな気持ちで、二度目のキスをした。 三度目は、もう颯から強引に舌を絡めて来た。 そこからは無我夢中で、初めてなのを気付かせない様に必死だった。 初めてだと気付いたら、颯は辞めてしまうと思ったからだった。
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