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颯の祈り
目が覚めた颯は、音がいない事にショックを受けた。
慌てて服を着ようとして、立ち上がりテーブルの上の光る物に目が止まった。
「18の誕生日に…贈った指輪。」
ーー「婚約指輪ってほどじゃないけど…。」ーー
当時、会社員の俺はお付き合いしてる人がいて、綺麗になる音に何も出来ないくせに、音が道で声を掛けられれば不安になり、他の男除けに指輪をプレゼントした。
それを大事に持ってくれていた。
思い出すと、過去の自分を叱りつけたくなる。
音のメモを手に取る。
『おはよう。彼が待ってるから帰るね。言える立場じゃないけど、彼女を大事にしてね。颯を好きだった13年が報われた気がしました。
ありがとう。さようなら。 音』
「俺とさよならする為の行為だったのか?」
重い頭で昨夜を思い出そうとする。
音の身体、吐息、汗、熱、ピンクの肌、言葉。
思い出すだけでもやばいと思う。
それぐらい好きだ。
その時、音の言葉を思い出す。
ーー「彼女妊娠してるって!」ーー
それを確かめてキチンと決着を着けてからじゃないと、中途半端な俺では会いに行けないと思った。
冷静になろうとベッドに腰掛けた。
何か、ベッドに見えて…上のシーツを引っ張った。
赤い……少量の赤い血が、付いていた。
「え?だって…初めてじゃないって………。」
青くなった。
あれほど抱いておきながら、今、気付いた事にも後悔した。
初めての音に、俺はなんて事をしたんだ。
強引に何度も……。
自己嫌悪に陥った。
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