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片付けをしながら、これから一緒に暮らしていくルームメイトとして、お互いの事を話し出す。
ひとつ話題をマリーが話して、答えるように音が話した。
「小学生で、姉達と遊ぶのがおかしいと思ってね?周りの目もおかしいし。男の子と遊び始めて、なんかつまんないの。そこからはほとんどひとり。」
「私は兄が二人いて父はやっと産まれた女の子だからか、私には甘くて、下の兄にいつもくっ付いて遊んでました。下の兄には幼馴染の親友がいて、三人でいつも遊んでました。」
「ありがちねぇ…。上に付いてちゃうのよね。それで、帰れ!とか言われるの。」
くすくす笑い、マリーは答えた。
「兄は優しいのですが、危ないとこに行くからと、言われた事もあります。兄の親友がおいで、側にいるから大丈夫…いつもそう言ってくれて。小学校に上がった頃、下校時間が上級生と近かったので、その日は兄達を待っていました。大きな男性に声を掛けられて、口を塞がれて、車の後ろに放り込まれて、口にガムテープをされて…。」
「ちょ、怖い。誘拐?」
「みたいですね。ちょうど見かけた兄達が走って来て、上の兄が石を手にボンネットに乗って、運転席の男の注意を引いて、男が怒って降りたところで、ロックが外れたので、下の兄と親友が助けてくれました。大騒ぎに気付いた先生や周りの大人が出て来て、私は無事でした。上の兄は近くの中学で、気が向いて来ていたと言ってましたが、多分、早く終わるときはいつも来てたと思います。」
「はぁ〜聞いているだけでドキドキするわね?それで?」
「無事でしたけど、心配した父が見張りをつけました。行き帰り、車での送迎になりました。」
「やっぱり、お嬢様なんだ…。」
「兄の親友は、父の会社と長い取引関係にあって、兄はそんな事知らずに仲良くなり、家に連れて来ていたのですが、父は彼を気に入った様でした。誘拐未遂の後、父から兄の親友と将来、結婚する様に言われました。正式な許嫁です。」
「ありがちな政略結婚?」
「私には嬉しい事でした。颯(はやて)さんも何も言わなかった。今、考えたら言えなかったんです。」
「どうして?でも子供じゃあ、どうしようもないわよねぇ。」
マリーは話の度に、素直に思った事を口にした。
「颯さんの家は、それなりに大きな会社でしたけど、うちの比ではありませんでした。父のご機嫌を損ねて取引を止められたら周りも一斉に止めるような、そういう立場で断れない。私が許嫁なら父は取引を止めることはないし、お嫁に行けば尚のこと、安泰です。」
「相手には有利、お嫁に行けば大事にもされるわね?」
「はい。父もそれを考えての事だと思いますし、颯さんを気に入っていたのもあると思います。」
「大方、片付いたわね…。お茶でも飲みながらゆっくり聞きましょうか?
ていうか…聞いてもいい?」
綺麗な顔が優しく微笑む。
「はい。聞いて下さい。」
マリーさんはソファに座り、私は床の上で、小さなテーブルにカップを二つ置いて話を始めた。
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