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女優だね
律に呼び出されて、律専用の部屋に颯は入った。
「まずこれ。入社式の彼女。飯塚円佳さん。
同僚が動画撮ってた。
で、これが一年後、これも受付仕事中、広報に載せようと撮影してた。
見てみるといい。」
ノーパソの画面を向けられた。
茶髪で化粧も違う所為か、随分、印象が変わる。
持ち物も今とは大分、趣味が違うなと思いながら見た。
違和感はある…でも好きになった人だ。
「これが何か?」
颯が律に聞くと、律はため息を吐いた。
「真面目だもんなぁ。もしかしてもう寝た?」
律から出た言葉にオタオタする。
「颯君の事、昔から知っているし、簡単に関係はしないと思うけど、寝ちゃってたら……真面目な君の事だ。何を言っても彼女を信じるよね?」
付き合い出して間もない。
先を考えて本気の恋だった。
だから、そういうのはきちんと許嫁と話を付けて、それからだと思っていたけど、酔った勢い…二人ともベロベロになりホテルになだれ込んだ。
一度だけ、関係は持った。
返事をしなくても律は察した。
「子供出来てないといいけど…。ゴムしてても穴くらい開けるよ?
この女…。」
パソコン画面の後ろ側をコンと軽く叩いて言う。
「何を…言っているのですか?失礼ですよ。」
好きな女性を侮辱されて怒る颯に、まぁまぁと言い、もう来ると付け足す。
(誰が…?)
訳が分からないまま、呆然と停止しているパソコン画面を凝視した。
その時、ドアがノックされ、律が返事をすると女性の背中を押し、奏が入って来た。
女性には見覚えがあった。
営業補佐をしている今の奏の彼女だった。
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