女優だね

1/5
2865人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ

女優だね

律に呼び出されて、律専用の部屋に颯は入った。 「まずこれ。入社式の彼女。飯塚円佳さん。 同僚が動画撮ってた。 で、これが一年後、これも受付仕事中、広報に載せようと撮影してた。 見てみるといい。」 ノーパソの画面を向けられた。 茶髪で化粧も違う所為か、随分、印象が変わる。 持ち物も今とは大分、趣味が違うなと思いながら見た。 違和感はある…でも好きになった人だ。 「これが何か?」 颯が律に聞くと、律はため息を吐いた。 「真面目だもんなぁ。もしかしてもう寝た?」 律から出た言葉にオタオタする。 「颯君の事、昔から知っているし、簡単に関係はしないと思うけど、寝ちゃってたら……真面目な君の事だ。何を言っても彼女を信じるよね?」 付き合い出して間もない。 先を考えて本気の恋だった。 だから、そういうのはきちんと許嫁と話を付けて、それからだと思っていたけど、酔った勢い…二人ともベロベロになりホテルになだれ込んだ。 一度だけ、関係は持った。 返事をしなくても律は察した。 「子供出来てないといいけど…。ゴムしてても穴くらい開けるよ? この女…。」 パソコン画面の後ろ側をコンと軽く叩いて言う。 「何を…言っているのですか?失礼ですよ。」 好きな女性を侮辱されて怒る颯に、まぁまぁと言い、もう来ると付け足す。 (誰が…?) 訳が分からないまま、呆然と停止しているパソコン画面を凝視した。 その時、ドアがノックされ、律が返事をすると女性の背中を押し、奏が入って来た。 女性には見覚えがあった。 営業補佐をしている今の奏の彼女だった。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!