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こうして、なんとか教室まで辿り着いたものの、眠いし火傷はヒリヒリするし、腰も足も棒みたいに固まっているという訳だ。事故の打ち身も鈍く痛む。
怪訝そうな柴崎の前で伸びをすると、関節が鳴るのと同時にぐううっと腹が鳴った。思い出して、直己がくれたコンビニ袋を取り出した。
「シャケ、昆布、梅干し、おかか……。アイツ、ケーキ屋のくせに和食派か? 全部三割引シール貼ってあるし」
ペリペリと包装を剥がし、オニギリを食べる。柴崎が首をかしげた。
「ケーキのシャケが三割引?」
「いや、なんでも……。あっ、そうだ柴崎、昨日の夜お前んちに泊まってたコトにしといてくんねえ?」
「なんで?」
「ちょっと事情があって外泊したんだけどよ……。母ちゃんにはお前んちに泊まるって連絡しちゃったから」
「……女?」
柴崎が、好奇心を露わに身を乗り出してくる。
「そんなんじゃねーって。後で話す」
「ふうん……」
柴崎はニヤニヤしている。
「あー、眠……ってか、保健室行ってくる」
「寝てくんの?」
「いや、火傷してたの思い出した」
保健室では、手首に大きめの湿潤パッドを貼ってくれた。火傷にはこれが一番いいとのことだ。授業は受けるつもりだったが、顔色の悪さを見兼ねた養護教諭に寝ていくよう勧められ、結局、昼過ぎまで寝てしてしまった。
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