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ケーキ屋ビター&スウィートは、N駅前商店街の中ほどにある。
駅前商店街といっても、四方を田んぼに囲まれた無人駅から伸びる道路の両脇に、二十軒程の店舗が並んでいるというだけのシロモノだ。そのうち半分は、もう何年も錆びたシャッターを下ろしたままで、駅に一番近い場所にあるコンビニだけが一晩中ピカピカと明かりを付けている。
この沿線の駅前はどこもこんな調子だった。元からの過疎化の上に、隣町に出来た大型ショッピングモールが小さな店々に追い討ちをかけている。
真由は下校したその足で電車に乗ると、朝のおぼろげな記憶に沿ってN駅商店街を歩き、ビター&スウィートに向かった。直己に何か言われていたわけではないが、働いて弁償すると宣言してしまった手前、『出勤』しないワケにはいかない気がしたのだ。
(そうだ、自転車どうにかしねえと……)
事故で壊れた自転車は、ビター&スウィートに運ばせてもらっていた。母親にバレぬよう、コッソリ修理に出すつもりだった。だが、店に着いてみると影も形も見当たらない。
「アレ、修理に出しといたからァ」
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