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直己が、真由からのメモを手に作業台の前のスツールに腰を下ろすのと同時に、洗い物の音が聞こえてきた。お湯が流しを叩く音がやけに響いて、今夜のビター&スウィートは、いつにも増して静かに感じられる。閉店まで途切れることなく来店していた北高の女の子たちが振り撒いていた賑やかさの反動かもしれない。 「やっぱり一口サイズが人気だったみたいだな」 予想よりずっと詳細なメモに感心しながら呟くと、真由が洗い物を続けながら答えた。 「大きめのは、出した瞬間は盛り上がんだけど、なかなか誰も手を出さなくてさ。でも最後に、みんなで分けて食べよう!って、また盛り上がってた」 「女子あるある、かもな。遠慮してたんだろ」

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