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4月22日
いつもより、20分は早く家を出た。
今日は青葉小で、読み聞かせデビューだ。
少し、いやかなりドキドキする。
朝、娘の梨花にそのことを言ってみた。
「いつもみたいに、梨花の学校で、読んでると思えばいいじゃん」
あ、そうね。
逆に励まされてしまった。
入るクラスは、2年1組。
何の本にするか、図書室の絵本を何冊も読んだ。
その相談もしたくて、先週の土曜日に「ねこもりとしょかん」に行った。
私がスタッフとして関わっている、子ども図書館だ。
開館している時は、スタッフで当番をする。だいたい、2ヶ月に1回程度回ってくる。今日の当番は、館長の小森さんだ。
「やっと、赤木さんにぴったりの仕事ができるようになったわね」
「はい! もうこれもみんな『ねこもり』のおかげです」
それで、読み聞かせの本を相談する。
「今まで、読み聞かせで読んだ本を参考にすればいいと思うけど、あちらの学校にある本がいいわね。あとで読みたくなったら、読めるし」
「そうですね。それが、読書に繋がっていくんですね」
「それに、まず赤木さんがその本を読んでて楽しくなくてはね」
「好きな本とそうでない本では、伝わり方が違いますね」
「でも、思い入れたっぷり過ぎてもダメよ。それから朝から重い本は、どうもねえ。でも、私たちは、外部の人間だけど、赤木さんは内部の人になるわけだから、子どもたちとの絆が深まれば、メッセージ性の強い本でも、読んであげられるんじゃない?」
「絆が深まれば……どうしたら深まるでしょうか」
小森さんは首を傾げて、いたずらっぽく笑う。
「さあ、それは赤木さんの腕の見せどころかしら。そんなに気張らなくても、絵本が橋渡ししてくれるんじゃない? それに、赤木さんはもう、そういう力とか、絵本を見る目は、身についてると思うわよ」
そうは言われても、少し不安だった。
私は甲斐信枝さんの「たんぽぽ」を読むことにした。よく植物を観察した、写実的な絵本だ。物語というより、科学読み物という趣きがある。
家でも、練習がてら子どもに読んで聞かせた。綿毛が飛ぶところで、目を見張っていた。
さあ、どんな反応を見せてくれるだろうか。
私は絵本を胸に抱えて、廊下から教室をのぞきこんだ。
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