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いつもなら虫採り網や虫かご、昆虫採集セットを持ってくる所だが、今日は何も持っていない。
「・・・どうしよ。あ!」
カサッと小さな音と共に、そばの雑草が揺れた。
バッタでも居たのかもしれない。
悔しい。
「帰ろうかなぁ」
でも今戻ったら、あの変な生き物も居るだろうか。
カサッ
ゴンッ
草が揺れる音のすぐあと、鈍い音がした。
「ひぃっ!!」
草むらの中に、倒れているさっきの生き物がいた。
何故か頭を両手で抑えたまま、石に頭をぶつけてうつぶせで横たわっていた。
その手には、アイスの棒が握られてる。
暫く動かないのを見ていると、突然むくりと起き上がり、棒を差し出してきたのだ。
「生きてる!」
頭から手を離すと、またあのカラカラという音が鳴った。
「もしかして・・・音が鳴らないように抑えてた?」
私の問いに答えることもなく、無言で棒を渡してくる。
「い、いらないって」
逃げようと思ったが、よく見ると棒には【ヒット二塁打】と書かれていた。
「あっ!」
思わず声が出た。
ホームランバーは、【ホームラン】なら無料で1本。
ヒットも合計で四塁打になれば、無料で1本貰える。
今まで集めたのと合わせたら、丁度四塁打になるのだ。
「あ、ありがと」
流石にそのルールをこの生き物がわかっていたとは思えないし、たまたまだろうが、受け取らないわけにもいかない。
そっと手だけを伸ばし、摘まむようにして棒を貰うと、突然くるりときびすを返して草むらの中へと消えていった。
「え・・・」
これを返しに来たのか?
わざわざ?
「あ、王冠!」
さっきの生き物が居た場所に、ペプシの王冠が落ちていた。
王冠の裏をめくる。
ペプシやコカ・コーラには、当たり付き王冠がある。
金額が書いてあるものは、お金が貰えるのだ。
「何だ、ハズレか」
ハズレ王冠をポケットに仕舞い、来た道を戻ることにした。
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