コレクション

6/13
前へ
/88ページ
次へ
緩やかな流れの川は、太陽の光が反射して輝いていた。 割り箸にタコ糸をくくりつけた手作りの竿に、スルメを付ける。 その場にしゃがみ、それを川へと垂らした。 次第に日が高くなる。 一向に何も掛かる気がしなかった。 「おい、何やってんだ?」 諦めて帰ろうかと思っていたとき、聞きたくない声に呼ばれた。 「お前、ザリガニ釣り初めてだろ」 友明が笑いながら言う隣で、真理と可奈子がこちらを見てコソコソと笑っていた。 大人しい良太は、その後ろでこちらを見つめていた。 「こんな時間に釣れねーよ。夏は・・・」 その時、川の向こうの草むらから視線を感じた。 あの生き物が、また頭を両手で抑えて草の影から覗いていた。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加